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047 笑う女王と嗤う法皇 ◆dKv6nbYMB 走る少女が一人。その背を追う美女が一人。 その光景だけならば、ある種の趣向を持つ者にはたまらないものかもしれない。 「どうしたほむら!少しは反撃してきてもいいんだぞ!?」 「......」 生憎、いま行われているのは圧倒的な強者による蹂躙。 逃げ回る兎を狼がいたぶりながら遊んでいるようなものだ。 勿論、魔法少女である暁美ほむらはただ逃げ回るだけの兎ではない。 迫りくる氷柱を避けながら、どうにか牽制程度の攻撃は仕掛けようと隙を窺っているが... (反撃していい?冗談じゃない。だったらもっと隙を作りなさいよ) エスデスの実力は本物だ。己の実力に絶対の自信はあるが、慢心は見つからない。 図体のデカさにカマをかけて、一切の攻撃から身を守ろうとしないワルプルギスの夜とは違う。 時間を止めようにも、決定打も持たないいま、下手に魔力を消費したくはない。 悔しいが、いまは背を向けて逃走するしかない。 ほむらは悔しさと苛立ちに顔を歪めた。 対するエスデスは、笑みを浮かべていた。その笑顔は美しくもあるが、同時にドス黒い邪悪さも兼ね備えていた。 「そらそら、このまま何もせずに死ぬつもりか!?」 エスデスは本気を出していない。 アヴドゥルへの攻撃が3割ならば、いまは2割といったところか。 そして、攻撃もあえてぎりぎり避けれるか掠めるかといった具合に調整している。 もちろん、殺さず楽しむためでもあるが、それ以上に (さあ、もう一度見せてみろ!お前の本当の力を!) 先程体験したほむらの能力『時間停止』に非常に興味を持ったからだ。 (どうやってその力を手に入れた?どうやって私と同じ『世界』に踏み込んだ!?) エスデスは知りたかった。愉しみながら知りたかった。 (私は鍛錬で手にしたぞ。お前はどうだ?お前もそうなのか!?それともそういう道具を持っているのか!?) ほむらが観念して時間停止を使い、反撃してきたところを逆に返り討ちにして"私も時間を止めれるぞ"と言い放ってから聞き出したかった。 エスデスの笑みに更にドス黒さが増し、それを確認したほむらの背に怖気が走り、逃げの速度を速めた。 (ふむ、掠り傷程度では音を上げんか。なら...) 2割程度だった力を、4割程度に引き上げようかと考え、この一定距離を保った鬼ごっこを終わらせようとした時だった。 ほむらが逃げる先に見えたのは森林。流石に入り組んだ樹海に入られては探索は面倒になる。不可能ではないし、絶対に見つけれるが。 一瞬だけ、ほむらが森林へと逃げ込む前にこの鬼ごっこに片をつけようかと思ったがすぐに改める。 (いや、森林を使っても逃げられないということを思い知らしめた方が、やつの奥の手を引き出し易いか) ほむらが森林へと逃げ込んだのを確認し、次いで自身も足を踏み入れようとしたその瞬間 「ん?」 ほむらよりも奥の闇から発光する球体が飛来し、エスデスの視界は塞がれた。 なにやら頭上を妙な物体が通ったので振り返ると、エスデスの姿は見えなかった。 撒いたか、という安心感と共に、光を放った敵がいるのではないかという警戒がほむらの足を止めた。 「そこのきみ」 突如かけられる声。物体が発射されたと思われる方向だ。 「安心してくれ。きみに危害を加えるつもりはないよ」 姿を現したのは、学生服に身を包み、前髪が奇妙に垂れ下がった青年だ。 青年の柔らかい物腰と言動に対してもほむらは警戒を緩めない。 この殺し合いの場において、こうも容易く声をかけられるのは危険人物か相当な自信家か、エスデスのようなそれらを両立した者くらいだ。 故に、先程の光体を放ったのはこの男だと確信する。 「......」 「警戒するのも仕方ないか。なら、このデイパックは...おや?」 青年の疑問の声にも警戒は解かず、耳だけ澄ましてみる。 パキ...パキ... (これは何の音?何かが折れる...違う、凍っている。凍る...ッ!) 凍る。その言葉を連想した瞬間、またもほむらの背に嫌な汗が噴き出す。 慌てて振り向くほむらだが、やはりその予感は的中していて。 後ろの木々が順番に、凍らされていたのだ。 突如飛来した物体。それはエスデスに当たったのか?答えは否。 いくら不意打ちとはいえ、その相手は帝国最強の女将軍にして、強者揃いの特殊警察『イェーガーズ』を束ねる将軍・エスデス。 幾多の戦場を駆け、様々な超人・帝具持ちと戦ってきた彼女にとってこの程度のものを躱すことなど造作もないことだ。 だがエスデスはそれを受け止める。身体ではなく氷でだが。 ガガガと派手な音を立てて氷に衝突し、そのまま包み込まれて静止する物体。 (ふむ。この衝撃からして、人体を破壊するには十分すぎるな。悪くない威力だ) なぜわざわざ受け止めたか。簡単だ。観察するためだ。 飛来してきた物体は全部で5つ。どれもが同じような色と形で、例えるならエメラルドのようなものだった。 (これはほむらのものではないな。これほどの物を持っていたなら最初の時間停止の時に使っているはずだ。私を殺すためにな) 勿論、観察しつつもほむらたちへの注意は怠っていない。 ほむらを狙った流れ弾か、こちらを狙った攻撃もしくは牽制か。 おそらく後者だが、エスデスにとってはどちらでもよかった。 ただ、一瞬だけ視界を塞がれたためにほむらの正確な位置がわからなくなったのは痛かった。 「よし。炙り出すか」 彼女の切り替えは早かった。 近くの木を人差し指でピンと弾く。 弾かれた木を中心に、南北へ向かって氷が広がり始める。 (地図は把握している。今からこの氷はB-2森の端に掛けて壁を作ることとなる。壁が出来た後はそのまま西へと浸食し、やがて森は全て凍りつくこととなる) エスデス自身は平地を進み、たまらず出てくるほむらともう一人を確保する手筈だ。 (氷を壊そうとするかもしれんが、私の氷だ。生半可な攻撃では壊せんぞ?) 「さあいくぞ。お前達はどこまで逃げ切れるかな?」 「なんだあれは...氷が周囲の物を凍らせている...!?」 「なんて無茶苦茶な女...!」 木々を浸食している氷がほむら達の退路を塞ぐように壁を模りつつある。 更に見間違いでなければ、氷は徐々にだがほむらたちに近づいているように見える。 「逃げたほうがいいんじゃあないか?」 「いいえ。逃げるにしても、決して道路に出ては駄目。そして、走ればおそらくその気配で見つかってしまう...」 ほむらがゆっくりと歩くよう指示すると、青年も無言で頷き、それに合わせる。 「...しかし、いくらなんでもあの向かってくる氷、遅すぎやしないか?」 「そうやって楽しむ女なんですよ」 先程まで追われていたほむらだからわかる。ああやってジワジワとイタぶるのも好きなタイプであることも。 (...でも、たしかに遅すぎる。私たちの歩くスピードとほとんど変わらないとはどういうことなの?) エスデスは違和感を感じていた。 (妙だな...たしかに私は奴らが逃げやすい程度の早さで凍らせるつもりだったが、いくらなんでも遅すぎる) ほむらの予想は概ね当たっていた。わざと逃げ切れる早さで凍らせ、楽しむつもりではあった。 だが、決して歩いてでも逃げれるようにした覚えはない。 (それだけではない) 己の脈と動悸を測ってみる。拷問について研究する過程で、人体についてはかなりの知識を持つ彼女は、脈と動悸を測れば健康状態がわかる。 (...やはり、少々疲労があるようだ) 普段ならば、いくら小技を使おうとも疲労はない。だが、いまは確かに疲労を感じている。 凍る早さと疲労の問題。 これらを繋げると、ひとつの答えに辿りついた。 (広川め、なにか細工をしたな) 殺し合いが始まる前、広川を脅かしてやろうとデモンズエキスを使おうとしたが、全く出すことが出来なかった。 広川が、自らが語った"異能"を封じる力を持つとすれば、相手の能力を制御できてもおかしくない。 もちろん、帝具のように普通じゃない道具も弱体化させることができるのだろう。 そんな制限をかけるのは、おそらく公平になるようにするためだろうが... (勿体ないことを。死合は互角でないと見る側としては面白くないのは同意だが、そのために能力を制限するのは気に食わん。 制限するくらいなら、近い実力者ばかり集めればいいものを) 広川に対して落胆の感想を浮かべ、制限に関しては一旦保留する。 (さて。ほむらたちを炙り出すのは不可能ではない。というか出来ない自信がない) だが、制限のせいで時間はかかるし、疲労もかなりのものとなるだろう。なにより、制限のことで気持ちが少し萎えてしまった。 それに、エスデスには約束がある。『6時間後にコンサートホールへと集まる』という約束が。 デバイスを取り出し、時間を確かめる。 (もう半分にまで迫っているな。あんまり時間をかけていると間に合わん) エスデスは軍人だ。 もし部下が集合時間を破れば、仮に怪我人だとしても『ソフト拷問コースC』を容赦なくかける。 そんな自分が定めた約束という規律を破りたくはないのだ。 (ほむらとはもう少し遊びたかったが...仕方ない) エスデスがパチンと指を鳴らすと、パリンという音とともに、木々を覆っていた氷が消えてなくなった。 「聞こえるか?追い回したことは謝罪する。すまなかったほむら。だが、おまえの力が知りたかったんだ。悪く思わないでくれ。光弾を撃ったもう一人もだ」 エスデスの言葉に対する反応は無い。エスデスもそれでいいと思っている。 「時間が迫りつつあるので、私はもうお前たちを追わん。私はこれから西のエリアをまわるが、その前に聞きたい。広川を殺したあと私の元へ来ないか? ああ、断っても殺しはせん。アヴドゥルにもキッパリと断られたよ。30秒待つから、その気がなければなにも返事をしなくていい」 答えはわかっているがな、と思いつつほむらたちの反応を待つことにする。 あっというまに30秒が経過する。 「わかった。それがお前たちの答えだな。私はこれで失礼する。では、放送後にコンサートホールでまた会おう」 まるで、来るのは当たり前だと言わんばかりに言い放ち、エスデスは悠然と歩き出す。 (あいつは、必ず私のもとへ来る。コンサートホールには来なくとも、必ずいつかは現れる。 強力な戦力を求めてか、排除すべき人間と判断してかはわからんがな) 後者ならもっと楽しめそうだな、と期待を胸に膨らませる。 (だが、敵として私の前に現れたときは覚悟しろよ?必ずその能力を手に入れた経緯を引き出してやる。 奥の手であろうものだ。そう易々と話したくはないだろう。だが、私は私の欲求を満たすならばなんでもするぞ。 お前の歯を砕いてでも 片目を潰してでも 頬に風穴を開けてでも 両手両足の爪を剥がしてでも その平たい胸をさらに平たくしてでも 腕を切り刻んででも 両脚を切り刻んででもだ。 それほどお前の能力には興味を持ったのだ!) 傍から見れば冗談にしか聞こえないだろう。だが、彼女は本気だ。いつだって本気だ。 彼女のドス黒い笑みは、まだ絶えていない。 【B-1/一日目/黎明】 【エスデス@アカメが斬る!】 [状態]:高揚感 疲労(小) [装備]: [道具]:デイパック、基本支給品、不明支給品1~3 [思考] 基本:殺し合いを愉しんだ後に広川を殺す。 0:協力者を集め六時間後にコンサートホールへ向かう。 1:その後DIOの館へ攻め込む。 2:殺し合いを愉しむために積極的に交戦を行う。殺してしまったら仕方無い。 3:タツミに逢いたい。 [備考] ※参戦時期はセリュー死亡以前のどこかから。 ※奥の手『摩訶鉢特摩』は本人曰く「一日に一度が限界」です。 ※アブドゥルの知り合い(ジョースター一行)の名前を把握しました。 ※DIOに興味を抱いています。 ※暁美ほむらに興味を抱いています。 ※暁美ほむらが時を止めれる事を知りました。 ※自分にかけられている制限に気付きました。 「本当に去ったようだが...諦めたのか?」 「いいえ。言葉通り、時間が迫っているのでしょう」 どうにか一難去ったことに、ほむらは胸を撫で下ろす。 (まどかに危険をもたらす可能性は高いけれど...いまの私にはあいつを仕留める決定打と呼べるものがない) ほむらのデイパックには帝具『万里飛翔マスティマ』があるが、飛翔以外の使い方がよくわからないものに運命を委ねる気にはならなかった。 「では、自己紹介といこう。わたしの名は花京院典明。きみの名は?」 「...暁美ほむらです」 物腰柔らかく対応する花京院に対してもほむらは警戒を解かない。目の前の男が危険かどうか判断するには情報が足りないのだ。 「おっと、怪我だらけじゃないか。どれも重傷ではないが、塞げるものは塞いでおいた方がいい。治療道具は?」 「持ってません」 「なら病院へ向かおう。情報交換は道すがらということで...」 「ま、待ってください」 先導して病院へと歩を進めようとする花京院を慌てて呼び止める。 病院に戻ること自体は賛成だ。だが、その前に知らなければならないことがある。 「花京院さんは、ここに来るまでに誰かに会いましたか?」 もしも花京院が誰かと出会い、分かれて行動しているなら。その人物が頼りになる人物なら。 会っておきたいと思うのが心情だ。 だが、ほむらの期待はあっさりと崩される。 「いや。わたしはA-4の武器庫の方から来たんだが、まだ誰にも会っていない」 「...そうですか」 誰とも会っていないということはそれだけ手に入れられる情報が少ないということだが、反面嬉しいことではあるのかもしれない。 (少なくとも、エスデスの行先にはまどかはいなさそうね) 「では、病院へ向かうということでいいかな?」 (回収し忘れていた医療器具のこともあるし、エスデスとは別の方向。それに、おそらく多くの参加者が向かうはず...) 「ええ。お願いします」 花京院が先導して歩き、距離を開けてほむらがついていく。 その道すがらで簡単な情報交換を行う。 「美樹さやかに巴マミ、佐倉杏子。それがきみの友達の名前か」 「はい」 ほむらはまどかの名前をあえて出さなかった。まだ花京院を警戒しているからだ。 「花京院さんは知り合いはいるんですか?」 「わたしが知っているのは一人...DIO様だけだ」 「ディ、DIO?」 「知っているのかい?」 「い、いえ。地図に屋敷が載ってましたから」 思わぬところで思わぬ名前を聞かされたため、うっかり動揺してしまったほむら。 当然と言えば当然だろう。なんせ、エスデスとアヴドゥルという人間が言うには危険人物である者の名なのだから。 (...でも、DIOが危険人物というのはアヴドゥルという人だけの情報。DIOを知る人から聞いた方が確実といえば確実ね) 「そのDIOという人はどんな人なんですか?」 ほむらの問いに、花京院は考える素振りを見せる。 やがて、思いついたように振り向くと、右手の甲をほむらに向けて差し出した。 「いいかい、この手を見ていてくれ。驚かないでくれよ」 ほむらは、言われた通りに差し出された手を見つめる。 ―――ブンッ 「ッ!?」 ほむらは己の目を疑った。確かにいま、花京院の腕から緑色の別の腕が浮き出ているのだ。 「...やはり見えるか。これは、生まれつきの体質でね。普通の人には見えないんだが...なぜかいまは見えるようになっているらしい」 「体質...?」 そんな体質は聞いたことが無い、とほむらは思う。だが、魔力は感じられないため、エスデスと同じく魔法少女に関係するものではないようだとも判断する。 驚いた反面、なぜいま見せたのかという疑問がほむらに湧いてくる。 「...わたしは、他の誰にも見えないこの力を自覚した時、誰とも打ち解けようとはしなかった」 花京院が静かに語りはじめる。 「町に住んでいるとたくさんの人と出会う。その誰しもがなにかしらの繋がりを持っていた。 小学校のクラスの○○くんのアドレス帳は友人の名前と電話番号でいっぱいだ。父には母がいる。母には父がいる。 わたしは違う。この『力』が見える人は誰一人としていなかった。 両親は好きだ。だが、気持ちを通い合わせることはできない。この『力』が見えない人と真に気持ちが通い合うはずは...ない。 自分には理解者など現れない...そう思っていた」 そこには怒りや悲しみ、『力』への恨みといった感情は一切なく、ただ事実を述べているようにほむらの目には映った。 「だが、DIO様は違った。彼はわたしの力を知りながら、優しく手を差し伸べてくれた。 『花京院くん。恐れることはないんだよ。友達になろう』。そう言ってくれた。 彼も同じ力を持っていたのだ。 嬉しかった。わたしは独りじゃなかったんだ。そう気づいたとき...心の底から安心したんだ」 花京院の独白を聞き終えたほむらは思った。 似ている。 魔法少女になったために、他者から疎遠に為らざるをえなかった巴マミに。 自分の身体が人間とは違うものとなったために、想い人に気持ちを伝えることすらできなかった美樹さやかに。 そして...一人の人間に救われた、他ならぬ自分自身に。 花京院が嘘を吐いているようには見えなかった。 全てを鵜呑みにするわけではないが、彼が語ったDIOという男については嫌な印象は持たない。 アヴドゥルという人が危険だと言っているのは、単に勘違いかもしれないし、もしくはDIO自身に恨みがあるのかもしれない。 利益による対立。信頼関係の拗れ。疑念による闘争。 ほむら自身、そういったことは何度も経験してきた。 もっとも、DIOが本当によからぬことを企んでいて、花京院が騙されている可能性もないわけではないが。 「すまない。話し過ぎたな。きみの手当を急がなければならないというのに」 「...いえ。DIOって人のこと、好きなんですね」 「ああ。尊敬しているし、憧れてもいる。とても大切な人なんだ」 傍からみれば、ちょっと行きすぎじゃないかと思うところがあるかもしれない。 だが、ほむらはそう思えなかった。ほむら自身、花京院が語るDIOへの感情と似たようなものをまどかに感じているからだ。 (いずれにせよ、DIOにもアヴドゥルにも会ってみなければわからない、か) そうしてほむらは花京院に警戒はしつつも、来た道を引き返すこととなる。 探し人であるまどかから離れていく道だということも知らずに。 (上手くいったようだな...) 花京院典明は心の中でほくそ笑む。 彼がほむらを助けた理由。 肉の目による洗脳が解けた?肉の目が植え付けられつつも正義の心に目覚め、弱者を放っておけなかった? どれも違う。 正解は、『利用するため』だ。 花京院の方針はなんら変わっていない。 DIOを生存させる。それだけはゆるぎないのだ。 ☆ 時は遡る。 入手した戦利品を整理しながら花京院典明は考える。 先程は出会いがしらに少女を殺してしまったが、それは失策だったかもしれない。 この会場に集められた数は、DIOと自分を除けば総数70。 もしかしたら何人かはDIOの部下もいるかもしれないが、DIOに忠誠を誓った日がまだ浅い自分が考えるだけ無駄だとも思う。それは本人から聞くしかあるまい。 1対1ならまだしも、武装した一般人が10人も集まれば、それだけでも十分に脅威になる。 四方八方を囲まれてショットガンでも放たれれば、いくらスタンド使いでも切り抜けるのは難しい。 そんなこともありえる殺し合いだ。情報は何より大切になる。 念のためにハンカチで注意を逸らして殺したが、その前に少女から情報を聞き出しておけばよかったと切に思う。 いや、殺さずとも『ハイエロファントグリーン』を体内に忍び込ませて人質にするのもよし。 お人好しを装い、人数が増えたところで一網打尽にするのもよし。使い道はいくらでもあったのだ。 (...まあ、過ぎたことだ。仕方ないか) 次からは気をつけようと決め、デイパックの中の物を掴んだ時だった。 ―――うおわあああああ! 突如響いた悲鳴。 花京院は慌ててデイパックから手を放し、周囲を確認する。しかし、人の気配は全くしない。 念のためにスタンドで周囲を探るが、やはり誰もいない。 気をとりなおしてデイパックを探ると ―――あっ、おいあんた!そのまま俺をひっp また声がした。 花京院は慌ててデイパックから手を放し、周囲を確認する。しかし、人の気配は全くしない。 念のためにスタンドで周囲を探るが、やはり誰もいない。 気をとりなおして再びデイパックを探ると ―――話は最後まで聞けぇ!いいか、とりあえず俺をここからひっぱり またまた声がした 花京院は(以下略) ―――...お願いします。そのまま手を離さず、どうか私をここから取り出してください。 いまにも泣きだしそうなその声を聞いて、ようやくデイパックに原因があることに気が付いた。 (刀か。...美しい刃渡りだ) デイパックから取り出したのは一振りの刀。 刃物に関しては大した知識を持っていない花京院だが、その刃渡りには素直に関心した。 ―――あ~、ゴホン。とりあえず出してくれたことには礼を言おう。あんたが用心深い性格なのはわかったが、いまは俺を持ったままにしててくれ。 今度は刀を握ったまま周囲を見回してみる。やはり誰もいない。 ―――わかったか?今までの声は全部おれってことだよ (信じられんな...) 意思を持たないはずの刀が喋る。にわかには信じ難いが、こうして喋られている以上認めるしかない。 とりあえずそう己に言い聞かせることで、一応の納得をした。 ―――では気をとりなおして...ジョースターを殺せ!ポルナレフをブッた切れ!承太郎をまっぷたつにしろ! 「......」 ―――お前は達人だ...剣の達人だ。誰よりも強い、なんでも切れる! 「さっきからなにを言っている?」 ―――あ、あれ?おかしいな、なんで操れねえんだ!? 「...なんだかよくわからんが、お前を持っていてもロクなことにはならなそうだ」 花京院がとりあえず剣を地面に置くと、やかましい声は一切聞こえなくなった。 しばらくデイパックを探っていると、今度は一枚の紙が出てきた。 『――アヌビス神の暗示のスタンド―― 500年前この剣を作った刀鍛冶のスタンドが剣に憑りついたもの。 主な能力は以下の三つになる。 ○物質を透過して、斬りたいと思った対象だけを斬ることができる ○一度受けた攻撃を憶え、その度に力と速さが強化されていく ○精神を乗っ取る ただし!このスタンドは、一般人でも一騎当千のスタンド使いでも精神を乗っ取れるが以下の制約をかけられている。 ○アヌビスが乗っ取れるのは、対象の合意があるか、気絶している時だけ。 ○アヌビスの精神が表面化している時の記憶は対象者の精神が戻ったときも引き継がれる。 ○精神を乗っ取れる時間は10分。また、連続して乗っ取ることはできない。 以上』 「......」 どうやら、この刀剣は殺し合いという場においては当たりの部類に入るらしい。 だが、花京院典明にとっては当たりといえる代物ではなかった。 戦えば戦うほど強くなる刀剣。確かに強力だ。 だが、花京院に剣道の心得はない。そんなド素人が強力な刀を振ったところでなんになる。それならば己のスタンドで攻撃した方が早い。 とはいえ、こんな刀に己の運命を任せられるかといえば答えはノゥ。不安しかない。 ならば、このまま放置すればいいかといえばそうもいかない。 もし、この刀を先程の少女のような一般人が拾えば、それはそれで厄介だ。 むしろ力が無いぶん、意識を委ねて襲ってくるかもしれない。 以上のことから下した答えは (破壊するか) 己の背後に『ハイエロファントグリーン』を出現させる。 掌に破壊のエネルギーを溜め、狙いを定める。が (待てよ...) 己のスタンド能力とアヌビスへの制限を顧みて、考え方を改める。 思考が固まると、アヌビス神を拾い、語りかけた。 ―――ひ、ひええええ~!破壊するのだけはご勘弁を~! 「喜べ。わたしなら、お前の力を存分に発揮させてやれるぞ」 ―――へっ? そして舞台は現在へと戻る。 花京院は、利用できそうな者を欲した。できれば弱者がよかった。 まどかから奪ったデイパックを荷物を移し替えた後、奈落へと捨て、身を隠しやすい森林を進んでいた。 しばらく歩いていると、前方から戦闘音のようなものが聞こえた。 『ハイエロファントグリーン』を先行させ、様子を窺うと、氷を放っている女とそれから逃げる少女が目に映った。 どちらが弱者か。言うまでもない。 『ハイエロファントグリーン』を自分のところまで戻し、少女が森林へ入ってくるのを待つ。 少女が入ってきた機を見て、エメラルドスプラッシュを発射。 あの厄介そうな女を仕留めれればよかったが、生憎一発も当たらなかった。 結局、あの女は去っていったのは幸いだった。 おまけに、少女が氷に振り向いた瞬間、花京院は『仕込み』を滞りなく行えていた。 ―――しゅるしゅるしゅる 音はしていないが、そんな擬音が聞こえそうな動きで、注視しても気づきにくいほどの細い糸が少女のスカートへと入り込む。 『ハイエロファントグリーン』は、人体に潜り、操ることができる。 糸が少し入り込んだだけでは操れないが、スタンドが完全に入り込めば意識すらも奪うことができる。 そうなれば、もう花京院の人形と化す他ない。 そのまま人形として使うなり、アヌビス神に乗っ取らせるなり、様々な用途で利用されることとなる。 わざわざスタンドを出したのも、脚色を加えて長々と話をしたのも、糸が入り込んでいることに気付いていないか確認するためだった。 また、DIOの名をわざわざ出したのは、少女の反応を確認するためだった。 ジョースター一行の関係者なら敵意を剥きだしにしてくるはずであり、DIOに組するものなら交渉次第で手を組むこともできる。知らない場合はそのまま利用すればいい。 少女は『知らない者』だったようなので、花京院はトコトン利用し尽くすことにした 花京院典明はとにかくツイていた。 まどかを撃ったあと、もし南下していれば後藤に食い殺されていただろうし、平地を進んで東へ向かっていれば承太郎に遭遇していた可能性が高い。 まどかから情報を得ていれば、ほむらの前でボロを出していた可能性もある。 もしエスデスを操ろうとすれば、たちまち見破られて返り討ちに遭っていただろう。 更に彼自身知らないことだが、彼は偶然にもほむらの最大の弱点を突いていたのだ。 ほむらの時間停止は、他者に触れながら行うと、触れた相手もまた止まった時の中を動くことができる。 ただし、これにはほむらが直接触れたものだけではなく、間接的に触れられていた場合も含まれる。 現に、巴マミは予め己の魔法で作ったリボンを気づかれないうちにほむらの脚に結び付けておいたことで、時間停止による拘束から逃れていた。 花京院もまた、既に『ハイエロファントグリーン』の糸でほむらに触れているため、彼女の時間停止の効果を受け付けないのだ。 花京院は心中で嗤う。己の幸運に気付かぬままに、一人嗤っていた。 【B-1/森林/一日目/黎明】 【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ(新編 叛逆の物語)】 [状態]:疲労(中)、ソウルジェムの濁り(小) 全身にかすり傷 [装備]:見滝原中学の制服、まどかのリボン [道具]:デイパック、基本支給品、万里飛翔マスティマ@アカメが斬る! [思考]: 基本:まどかを生存させつつ、この殺し合いを破壊する 0:花京院に警戒しつつ、病院に戻って医療品を取りに帰る。ただし長居するつもりはない 1:まどかを保護する。 2:協力者の確保。 3:危険人物の一掃 4:まどかの優勝は最終手段 5:DIOは危険人物ではない...? 6:コンサートホールに行く……? [備考] ※参戦時期は、新編叛逆の物語で、まどかの本音を聞いてからのどこかからです。 ※まどかのリボンは支給品ではありません。既に身に着けていたものです ※魔法は時間停止の盾です。時間を撒き戻すことはできません。 ※この殺し合いにはインキュベーターが絡んでいると思っています。 ※時止は普段よりも多く魔力を消費します。時間については不明ですが分は無理です。 ※エスデスは危険人物だと認識しました。 ※花京院が武器庫から来たと思っています(本当は時計塔)。そのため、西側に参加者はいない可能性が高いと考えています。 ※花京院のスタンド『ハイエロファントグリーン』の糸が徐々に身体を浸食しています。ほむらはそのことに気付いていません。 【万里飛翔マスティマ@アカメが斬る!】 翼の帝具。装着することにより飛翔能力を得ることが可能。 翼は柱を破壊する程度の近接戦闘は描写から可能であり、無数の羽を飛ばして攻撃することも出来る。 飛翔能力は三十分の飛翔に対し二時間の休息が必要である。 奥の手は出力を上昇させ光の翼を形成し攻撃を跳ね返す『神の羽根』。 【花京院典明@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】 [状態]:健康 [装備]:額に肉の芽 [道具]:デイパック、基本支給品×2、油性ペン(花京院の支給品)、アヌビス神@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース(まどかの支給品) 花京院の不明支給品0~2 まどかの不明支給品0~2 [思考・行動] 基本方針:DIO様を優勝させる。 0:病院へ向かい、医療器具を探す。留まるかどうかは後で決める。 1:ジョースター一行を殺す。(承太郎、ジョセフ、アヴドゥル) 2:他の参加者の殺害。ただし、今度からは慎重に殺す。 3:DIO様に会いたい。また、DIOの部下が他にもいるかどうか確かめたい。 4:ほむらを利用するため、病院へと向かい信頼を得る。病院に参加者がいれば情報を得てからほむら諸共殺害したい。 ※参戦時期は、DIOに肉の芽を埋められてから、承太郎と闘う前までの間です ※額に肉の芽が埋められています。これが無くならない限り、基本方針が覆ることはありません。 ※肉の芽が埋められている限りは、一人称は『わたし』で統一をお願いします。 ※この会場内のDIOが死んだ場合、この肉の芽がどうなるかは他の方に任せます。 ※『ハイエロファントグリーン』が他人に憑りついたとき、意識を奪えるかどうかは他の方に任せます 【アヌビス神@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース(まどかの支給品)】 500年前この剣を作った刀鍛冶のスタンドが剣に憑りついたもの。 主な能力は以下の三つになります。 物質を透過して、斬りたいと思った対象だけを斬ることができる 一度受けた攻撃を憶え、その度に力と速さが強化されていく 精神を乗っ取る ※アヌビス神の制約は以下の通りです アヌビスが精神を乗っ取れるのは、対象の合意があるか、気絶している時だけ。 アヌビスの精神が表面化している時の記憶は対象者の精神が戻ったときも引き継がれる。 精神を乗っ取れる時間は10分。また、連続して乗っ取ることはできない。その10分間は身体の所有者はアヌビス神の精神を押しのけることはできない。 通り抜ける力は使用可。 ※参戦時期はチャカが手にする前です。 時系列順で読む Back 揺れる水面のアイオライト Next 進撃のパラサイト 投下順で読む Back オフライン Next 進撃のパラサイト 039 時計仕掛の女 エスデス 056 すれ違い 暁美ほむら 097 我が侭な物語 006 始まってしまった物語に、奪われたままの時に 花京院典明
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179 WILD CHALLENGER(前編) ◆dKv6nbYMB. 「......」 キング・ブラッドレイは考える。 南方で起きた大規模な爆発の音。 彼がそれを聞きつけたのは、御坂美琴が眠りについてから程なくしてのことだった。 彼が悩んでいるのは、これからの方針について。 あの爆発音のもとへ向かうか、それともこのまま目的の地、アインクラッドへと進むか。 そもそもアインクラッドを目的地としているのは何故だ。 それはヒースクリフも目指しているかもしれないという可能性を託しているだけだ。 しかし、このゲームが始まってから一日が経とうとしている。 彼が会場全体を動き回っているとしたら、既に訪れ去っている可能性も低くは無い。 つまり、アインクラッドとやらに行っても、ヒースクリフに会える保証はないわけだ。 それに対してあの爆発音。 流石に、あれほどの爆発をまともに受けていれば生きてはいまいが、あれが起きたということは、少なくともあそこに何者かがいたということだ。 生存者がいなくとも、あの爆発に惹かれる者もいるだろう。 状況を把握しようとする者。 無謀にも被害者たちの生存を願う者。 戦闘を望み、脚を運ぶ者。 ヒースクリフではなくとも、参加者に遭える可能性は前者より高い。 「ふむ...」 と、なるとだ。 このままアインクラッドに向かうよりは、あちらに向かった方が益はある。 (そうなると、彼女を連れていくべきではなさそうだ) 回復結晶とやらで怪我は回復させたものの、疲れて眠っているところを見ると、全てが元通りという訳ではなさそうだ。 そんな彼女を戦場へ連れて行き、なにか妙な失態を冒そうものなら目も当てられない。 デイバックに入れて向かってもいいが、彼女を庇いながら戦うのは少々面倒だ。 ならば、ここに残し、体力の回復に専念させた方がいい。 もしかしたら、なにものかが襲撃してくる可能性もあるが、その時はその時だ。 それで命を落とすようなら、自分の同盟相手には不釣り合いだっただけの話だ。 念のため、『一旦南へ向かう』とだけ書置きを遺して、御坂をイェーガーズ本部の一室へと放置。 キング・ブラッドレイは疾風のごとく爆心地へとその足をすすめた。 同行者の体力の回復。襲われた時の責任はとらない。 この二つが既に矛盾しており、その矛盾から御坂美琴との不和を生む可能性は充分に高い。 彼は、そのことに気が付いているのだろうか。きっと気が付いている。 それを承知だからこそ――― 【D-4/イェーガーズ本部/一日目/夜中】 【御坂美琴@とある科学の超電磁砲】 [状態]:ダメージ(小)、疲労(小)、深い悲しみ 、自己嫌悪、人殺しの覚悟 睡眠 [装備]:コイン@とある科学の超電磁砲×2 、回復結晶@ソードアート・オンライン(3時間使用不可)、能力体結晶@とある科学の超電磁砲 [道具]:基本支給品一式、アヴドゥルの首輪、大量の鉄塊 [思考] 基本:優勝する。でも黒子たちと出会ったら……。 1:橋を渡りキング・ブラッドレイと共にアインクラッドに向かう。 2:もう、戻れない。戻るわけにはいかない。 3:戦力にならない奴は始末する。 ただし、いまは積極的に無力な者を探しにいくつもりはない。 4:ブラッドレイは殺さない。するとしたら最終局面。 5:殺しに慣れたい。 [備考] ※参戦時期は不明。 ※槙島の姿に気付いたかは不明。 ※ブラッドレイと休戦を結びました。 ※アヴドゥルのディパックは超電磁砲により消滅しました。 ※マハジオダインの雷撃を確認しました。 次なる戦場を求めて歩き出したエスデス。 しかし、ふと別の考えがよぎり、その足を止める。 「...あれほどの爆発、力に自信のある者なら放っておかないだろうな」 あの爆発は周囲に響き渡っている。 必ずやなにかしらの理由で惹かれる者はいるはずだ。 状況を把握しようとする者。 無謀にも被害者たちの生存を願う者。 戦闘を望み、脚を運ぶ者。 ただの一般人が脚を運ぶのはまずないが、少なくともそれなりに腕に自信があれば訪れるはずだ。 それに、戦いの連続でそろそろ小腹が空いてきたところだ。 少々疲れた身体を癒すのも兼ねてここで待ってみるのも一興だ。 地に腰を落ち着け、ごそごそとデイパックから取り出したのは、巨大な魚の丸焼き。 『アヴドゥル。お前の支給品に魚介類の詰め合わせがあったな。小腹が空いたからひとつ焼いてくれ』 『...私の炎はそのためにあるわけじゃないんだがな』 能力研究所へ向かう道中、そんな会話をしながらアヴドゥルに焼かせた魚だ。 それを食す前に研究所から立ち昇る煙を見つけたために食べる機会がなかったのだ。 焼き魚に、自らが破壊した駅員室の破片を付きさし串替わりにして、腹に被りつく。 うむ、美味い。 流石に冷めてしまっているが、この食べやすさは中まで火が通っていた証拠だ。 咄嗟の注文でも、極めて冷静に、丁寧に炎の威力を扱える男だ。 彼の本気を見れなかったのは悔いが残るし、改めて惜しいと思える人材だ。 尤も、部下ですらない男の死をいつまでも引きずる彼女ではないが。 ...己の半身が焼かれた直後に焼き魚を平気で喰えるような人間は、会場広しといえども彼女くらいだろう。 (しかし、こいつは存外便利なものだ) 焼き魚を頬張りながら、目の前に横たわらせたまどかとほむらの死体を見ながら思う。 ロイ・マスタング。 彼が自分をここまで追いつめ、いや、そもそも仮にもセリューの上官である自分を殺すと決意したのはこの死体の影響が大きい。 これが無ければ、おそらく彼は中々殺す決意をしなかっただろうし、したとしても中途半端な覚悟で終わっていた可能性も高い。 この死体を卯月が作ったと知ったからこそ、彼は卯月諸共エスデスを殺す決意に踏み出した。 そのため、どうせならもっと有効活用できないかと思い、あらかじめ回収しておいたのだ。 (怒りとは視野を狭めやすいものだが、時には大きな力となる。奴はそのことを改めて教えてくれたからな) 感情は時に戦局を覆す大きな力となる。 あれを見て感情を滾らせるような者とは、是非戦ってみたいものだ。 例えば、美樹さやか。 まどかからは、正義感が強く感情的になりやすい魔法少女だと聞いている。 あの死体を見せれば戦わない理由はないだろう。 例えば、佐倉杏子。 彼女とはDIOと戦う前に交戦したが、あの時はグランシャリオを使わせているにも関わらず、呆気なく勝負がついてしまった。 あれの相性に適合していないこともあったのだろうが、ウェイブ以上に精神に乱れがあったせいだろう。 そのウェイブも、覚悟を決めれば完成された強さの限界を超えてみせた。 ならば、ウェイブやマスタング同様、直情型に思えた彼女もまた、死体を見せて怒らせればもっと楽しめるかもしれない。 例えば、エドワード・エルリック。 彼とまどかたちは直接の面識はない。 しかし、前川みくの首を切断したことだけでも怒っていた男だ。 マスタングが死んだことも併せて教えてやればそれはそれは烈火のごとく噛みついてくることだろう。 「おっと。エドワードには一応首輪の解除を頼んでいたのだったな」 まあ、敵対するぶんにはなにも問題はない。 そのぶんお楽しみが増えるだけだ。 「さて。誰が最初にやって来るか...」 氷の女王は、己の空腹を満たしつつ訪れるであろう来客を待つ。 数刻後、完食した魚の骨が地面に捨てられるのと同時に、南方から電車が一台やってくる。 電車が半壊した駅に停まると、乗客がその姿を現した。 「ようやく来たか。さて、お前は私を愉しませてくれるのか?」 「あなたの愉しみなど知りませんが...その命、有意義に使わせていただきます」 ☆ ヒースクリフ―――茅場晶彦は考える。 (承太郎、ジョセフ・ジョースターは脱落し、ゲームに乗っているであろう者はほとんど呼ばれていない) コンサートホールで合流した面子は既に半分となり、友好的な関係を作れていたジョセフもまた死んだ。 モハメド・アヴドゥル、空条承太郎、鹿目まどか、暁美ほむら、ジョセフ・ジョースター... 思えば、エスデスと敵対はしなかった面子はことごとく死に至っている。 エドワードはどうなっているがわからないが、足立も足立で後藤を押し付けられるなど散々な目に遭っているらしい。 まるで死神だな、と思うのと同時に、そんな中でもこうして五体満足でいられる自分は幸運だな、となんとなく思う。 (とはいえ、銀に繋がる有益な情報はまだ得ていない。黒くんが見つけていれば話は早いが...) 地獄門で黒にはカジノ方面を探索するように伝えてある。 銀がそちらにいれば何の問題もないが、万が一南西方面にいた場合は厄介だ。 銀は盲目で、一人ではなんの戦闘力も有していないときく。 おそらくは腕の立つ者が同行しているのだろうが、もしもその保護者が籠城を決め込んだ場合、銀を確保するのが非常に困難になってしまう。 それに、合流が遅れれば遅れるほど、銀を失うリスクは高まってしまう。 (少し予定を早めるか) もともと、銀を確保してから南西を見て周る予定ではあった。 しかし、先程例を挙げたように、南西付近にいた場合非常に厄介なことになる。 ならば、銀は黒や学園にいる者たちと出会えていることに期待して、南西側を先に調査しよう。 それに、自分は南東側は黒やアカメたち、北西側はまどかや承太郎、北東側はこの目で情報を得ているが、南西に関してはほとんど情報を手に入れていない。 云わば魔境のようなものだ。 RPGでも、魔境には重大なイベントが隠されているのはお約束だ。向かう価値は充分にあるだろう。 「尤も、ゲームの筋書き通りとはいかないだろうがね。さて、この選択がどう出るか」 ☆ 魏が電車にて北上している最中のこと。 突如、大規模な爆発の音が鳴り響き、同時に電車が一時停止した。 どうやら、爆発の影響で線路に異常がないかを確認しているようだ。 魏は考える。 放送で聞いた首輪交換機について。 報酬が得られなかった首輪とは、十中八九自分のものだ。 電車から降りて取りに戻るのも悪くはないが... (たしか、あの首輪はランク1。入れ直したところで大したものは貰えないでしょうね) それに、首輪は自分が生存している間はずっと保管しているらしい。ならばそう焦ることもあるまい。 と、なればこのまま北上するのが賢い選択だろう。 あの爆発を受けて生きている者はそういない。 生きていても、満身創痍なのは確実だ。 電車の中で、支給品にあったうんまい棒なる菓子やパンを食しつつ身体を休める魏。 あまり腹は膨れなかったが、何も食べないよりはマシだ。 それからしばらくして。 線路に異常なし、と判断した電車は再び北へと向かう。 やがて、辿りついた先にいたのは、一人の女。 魏が今までに見てきた女性の中でもかなりの美貌といえるが、左半身には、全体を覆う火傷の痕が痛々しいほどに刻み込まれている。 自分も人のことを言えないが、と思いつつ、黒の死神に刻まれた火傷の痕をなぞる。 そして、気付く。彼女の足元に転がる見覚えのある半分の顔に。 「ひとつ聞いておきましょうか。"ソレ"はあなたがやったのですか?」 「ん、ああ、こいつか」 エスデスは、地面に寝かしていた死体を掴み、持ち上げる。 「そういえば、おまえはこいつを襲っていたな」 「...?」 「お前は知らないだろうが、私もあのコンサートホールにいたのだよ」 「そうですか」 「それで、だ」 エスデスは、"まどか"側の頬をつまみ、軽く引っ張ってみせる。 「私がお前が殺そうとした"こいつ"をこうしたとして―――お前はどうするんだ?」 まどかは魏が狩りそびれた獲物だ。 そんな獲物を横取りされて頭にこない狩人はいないだろう。 「別にどうも思いませんよ」 だが、契約者は合理的だ。 魏がまどかを襲ったのはあくまでも優勝への第一歩に過ぎず、その過程の戦闘になど想いを馳せることもなければ、逃がした標的を横取りされようが思うところなどない。 「なんだつまらん」 「ただ」 だが、魏はまどかに借りがある。 見事に一杯食わされ、あまつさえ肩に傷を負わされるという屈辱が。 そして、その屈辱を晴らしたかったと思うのは、契約者としてではなく魏志軍という一人の人間の意思だ。 「彼女には借りがある。彼女に返せなかったぶんは、同行者であったあなたに清算してもらうことにしましょう」 「八つ当たりというやつか。それも悪くない」 静かに笑みを浮かべる魏と、戦いへの期待を膨らませ、凶悪な笑みを浮かべるエスデス。 両者が互いに手をかざすのと同時。 水流と氷がぶつかり合い、戦いは始まる。 「懐かしいな、その帝具」 「あなたもこれを知っているのですか...まったく、それほどまでに有名な道具なのでしょうかね」 「それは元々私が部下に与えたものでな。お前がどれほど使いこなせるか、見せてもらおう」 魏が操るのは、駅員室の地下を走っていた水道の水。 地面から溢れだす水流がうねり蛇の如くエスデスへと襲い掛かるが、エスデスはそれに氷をぶつけて防御。 角度や方向、形を変えながら攻撃するも、それらは容易く氷の壁で防がれてしまう。 「ほう、中々使いこなしているようじゃないか。それで?まさか私をこのまま倒せるとでも思っているのか?」 「さて。それはどうでしょうか、ね!」 水流をエスデスの正面から襲わせ、エスデスもまた氷の塊をぶつけてそれに対応する。 「防ぎ続けるのは私の性に合っていない。このまま攻めさせてもらうぞ」 ぶつけた氷塊は、たちまち水流を凍りつかせ、あっという間に氷塊と水流の絡み合った氷の彫像が出来上がる。 氷とはもともと水を凍てつかせて形成されるもの。 デモンズエキス、いやエスデスの常識外れな力があれば、一瞬で水を凍りつかせるなど容易いこと。 液体を操るブラックマリンと全てを凍らせるデモンズエキスはこれ以上なく相性が悪かった。 「むっ」 しかし、その事実に魏は驚かない。 エスデスが氷を操ると解った時から、魏の狙いは接近戦へと変わっている。 如何に強大な力を持っていようとも、あれほどの水流を凍らせれば次に氷を作るのには時間がかかるはず。 そう判断した魏は、水流を放つと同時にナイフで己の手首を斬りつけつつエスデスへの距離を詰めていた。 振るわれる右腕と共に飛来する血液。 それはエスデスの眼前にまで迫り 「大味な技を囮に必殺の技を隠す。中々面白いが、相手が悪かったな」 身体に付着することなく、突如現れた氷の膜に防がれた。 魏の考えは決して間違ってはいない。 能力を派手に使えば、休む間もなしに能力を発動することは困難。それは、エスデスにも当てはまることだ。 だが、彼女のそのインターバルは極端に短い。ほんのわずかにタイムラグがあるだけで、僅かな力なら発動することが出来る。 魏は舌打ちをしながら指を弾き、氷の膜を破壊する。 「血が付着した部分を消し飛ばすことができる...なるほど、聞いた通りの力だ」 エスデスは氷で作った急繕いの剣を振るい、魏はそれを左手に持つアーミーナイフで迎え撃つ。 しかし、いつまでも密着して凍らされては敵わないので、すぐに距離をとると共に腕を振るい血を放つ。 「確かに強力だが、弱点が多すぎる。ひとつ」 飛ばされる血を氷の剣を振るい付着させる。魏は指を鳴らすが、破壊されるのは氷の剣だけ。 「こうやって人体以外のものを割り込ませてしまえば、それだけでほぼ無力化されてしまう。ふたつ」 エスデスは巨大な氷柱を魏に放ち、魏はそれに血を飛ばし、指を鳴らして破壊する。 その隙をつき、エスデスは魏への距離を一気に詰める。 先程魏がやったのと同じく、大味な技を囮に接近戦へと持ち込む腹積もりだ。 魏は再び腕を振るおうとするが―――間に合わない。 氷のグローブを纏ったエスデスの拳のラッシュがそれを許さない。 ラッシュの速さでは会場の中でもトップと言えるDIOの『世界』と曲がりなりにも殴りあえたのだ。 その威力と速さを捌きつつ反撃するのは至難の業だろう。 「血を飛ばそうというのなら、どうしても大ぶりな動きになってしまう...そのため、動きを制限されては反撃が難しい。私は流れる血にさえ気をつけていればいいのだからな。そして三つ目」 ついには反応しきれなくなったエスデスの拳が、魏の胸板を捉える。 以前受けたスタープラチナ、程とはいえないが、その重い拳を受けて魏は後方へと吹き飛ばされる。 「斬撃ならいざ知らず、打撃では血をばら撒けないためこうして遠慮なく攻撃ができる。どうだ、私の拳も中々のものだろう」 胸部に受けた痛みにより、魏は一瞬だが息を詰まらせる。 そんなことをお構いなしにエスデスは再び魏へと肉迫するが 「!」 エスデスの足元の地面が盛り上がったかと思えば、水流が踊り狂い、そのままエスデスをのみこみ、姿さえ見えなくなってしまう。 やったか、などとは思えない。 これはあくまでも牽制程度にしか考えておらず、少しだけ時間を稼ぐための苦肉の策だ。 いつ全てが凍りつき再び相対してもいいように、目は離さない。 「なにっ!?」 が、しかし、確かに時間は稼げたが、彼女の行動は予想を超えていた。 水流の全てを凍らせるのではなく、一部だけを凍りつかせ小さなトンネルを形成。 これでは、僅かな時間しか持ちこたえられないが、彼女の身体能力ならそれだけでも充分。 一直線に駆けだした彼女は、あっという間に魏との距離を詰め、その手に持つ巨大な氷のハンマーで魏を殴りつける。 魏は咄嗟に防御の耐性をとるものの、耐え切ることはできずに吹き飛ばされ、囮に使った水流の成れの果てにぶつけられた。 そして、間髪をいれずに投擲される氷の槍は、魏の左肩を貫きその場に固定させる。 「ぐあああっ!」 「悪くない悲鳴だ。...よし」 エスデスは、魏から一定の距離をとり氷の弾丸を宙に浮かせる。 「戦いもいいが、そろそろ単純に苦痛の悲鳴も聞きたかったところだ...さあ、愉しませてもらおうぞ」 エスデスは戦闘狂であるのと同時に拷問マニアである。 人体のどこをつけば苦痛を最大限に与えられるか、ぎりぎり死なないラインはどこなのか。 拷問による悲鳴を聞き愉悦を抱くためだけに、彼女は拷問について熱心に勉強している。 この会場に来てからは戦闘は存分に楽しんだが、拷問はほとんど手を付けていない。 そろそろ拷問欲求を満たしたいところだ。 できれば足立あたりがよかったが、まあ仕方ない。 それでは拷問を開始しよう。 「...さきほどあなたに指摘された弱点ですがね。私もここに連れてこられてから痛感していたのですよ」 ぼそぼそと、氷塊に縫い付けられた魏は語る。 「恥ずかしながらその弱点を突かれて逃走を喫したことすらある。とはいえ、これもまた対価であるためおいそれと変わることはできない」 よく聞き取れないが、諦めたのかと思い、氷の散弾の第一投を放つため、右手を挙げる。 そして、気が付く。 魏の目はまだ死んでいない。 「けれど、そんな能力でも工夫はできる―――例えばこんなふうに」 パチン、と音が鳴り響き。 「ッ!?」 同時に、エスデスの爪先に痛みが走る。 エスデスは視線を逸らし、確認する。 削られていた。 エスデスの爪先が、消え去っていたのだ。 エスデスが僅かに怯んだ隙を見逃さず、魏は懐から球状のものを取り出し投げつける。 (なんだこれは) 見覚えのないそれに、かつて噂で聞いたことのある帝具を思い浮かべる。 帝具『快投乱麻ダイリーガー』6つの球の帝具であり、そのひとつひとつに属性が付与されており、投げると効果が発動するというものらしい。 それでなくとも、この戦況で使うのなら有効打となるものだろう。 そう判断したエスデスは、飛来するそれを凍らせ 「ただのビリヤードの球ですよ。尤も、少々細工を施してありますが」 ようとするがしかし、球は突如軌道を変化させ、エスデスの技から逃れる。 更にその球から細い水流が飛び出し、エスデスの右肩に付着する。 そして。 ―――パチン 指が鳴ると同時に、エスデスの肩の一部が吹き飛ばされる。 その隙をつき、魏は右手首から流れる血を氷の槍に擦りつけ、指を鳴らし破壊。 拘束から逃れることに成功する。 「随分と小さいですが、まあ、一撃は一撃です」 魏が球に仕込んでいたのは、己の血液を溶かし合わせた少量の水。 カジノにて眠りにつく前、球に穴を開け、その水を入れて蓋をしておいた。 中にある水を、ブラックマリンで操作することによって、魏は変幻自在の魔球を投げることが出来たのだ。 そして、エスデスの爪先を吹き飛ばしたタネは至って簡単だ。 エスデスが水流の相手をしている際に、魏は右手首の血を地面に流していた。その地面を消し飛ばす際に、エスデスの爪先も巻き込まれただけのこと。 派手に水流を操っていたのも、全てはこの設置型の罠の目くらましである。 (だが、運が悪い...もう少し踏み込んでいれば片足は奪えただろうものを) 「面白い戦い方をする奴だ。そういうのも悪くない」 「あなたに褒められても嬉しくはないですね」 魏は思う。 これだけやっておいて、比較的余裕があった自分が半死人の筈のあの女に与えた傷は微々たるものだ。 相性の問題もあるが、やはりあの女の力は底知れない。 このままでは負ける。かといって、逃走手段も限られている。 さて、どうするか。そんなことを考えていた折だ。 「随分と派手にやっていると思えば、あなたでしたかエスデス」 「中々面白いことをしている。どれ、この老兵も混ぜてはくれんかね」 この逆境を覆す転機が訪れたのは。 ☆ (さて、どうしたものか) 西へ向かう道中、大規模な爆発音が響いたかと思えば、こんどは荒れ狂う水流と氷塊がぶつかり合う超常現象合戦だ。 何者かがいるに違いないと判断して脚を運んでみたが、状況は最悪といえる。 多くの参加者と敵対し、イェーガーズもまた壊滅したために孤立しつつもその圧倒的力を誇るエスデス。 自分とほとんど同じタイミングで辿りついたとみえる眼帯の男―――能力研究所で出会った喋るステッキの情報が正しければ、殺し合いに乗っているキング・ブラッドレイで間違いないだろう。 もう一人ゲームに乗っている参加者もいる。 更にいえば、その内二人はまず間違いなく話が通じない相手。 家庭用RPGでいえば、必須レベルアップの最中に、その地域に見合わない強さを持つ野良モンスター三体と同時に遭遇してしまう。 そんな在りえるレベルでの最悪な状況だ。運に任せて逃げるを選択するのが最善の策だろう。 (だが、やりようはいくらでもある―――それに、これくらいの困難は無いと面白くはないだろう?) 簡単すぎるRPGなど退屈以外のなにものでもない。多少の刺激があってこそ、楽しみは生まれるものだ。 例え、現状が考えられる中で不幸な部類に含まれていようとも。 例え、UB001なる者から依頼を託されていようとも。 そんなことで、研究者であり開発者でありプレイヤーでもある茅場晶彦の好奇心は揺るがない。 ただ、己の欲求を満たすことだけが彼の行動原理である。 かつて幾千ものプレイヤーを巻き込んでまで、かつて夢見たあの城を追い求めたのも。 こうして、ただの一プレイヤーとしてゲームに臨んでいるのも。 全ては己の飽いてやまない欲求に従っているだけのことだ。 そして、それを達成するためならば―――茅場晶彦は手段を択ばない。 「久しぶりだな、ヒースクリフ」 歩みよってくるヒースクリフに、エスデスは敵対の意を見せずに再会の言葉を交わす。 「時間にして思えばそうでもありませんが、たしかにあなたとは随分長い間会っていないような気もする」 「首輪の方はどうだ。なにか成果はあったのか?」 「残念ながら。そもそも首輪自体が中々手に入らないものでね」 それより、と言葉を切り、ヒースクリフはしゃがみ込み足元に転がるモノの顔を覗きこむ。 「彼女たちの骸...私がいただいてもよろしいですか」 「なんだ、死体愛好者だったのか?それとも人肉主義者か?」 「違いますよ。まどかは共に脱出を志した同志です。その骸はしっかりと弔ってやりたい」 「お前がそんなに義理堅い奴とは思えんがな」 「これでも人並みの情はあると自負しているつもりですけどね。それと、ついでですが」 エスデスに背を向け、ヒースクリフは魏志軍を鋭い目つきで睨みつける。 「彼の相手は私がしても?」 「どうした、やけにやる気があるじゃないか」 「彼は以前、まどかを襲撃している。同志を襲われた借りは必ず返す主義ですので」 「どの口がいうのやら。...コレももう少し使いたかったのだがな。まあいい。死体もあの男も好きにしろ」 「ありがとうございます」 思ったよりも話が通じるんだな、と意外に思うヒースクリフだが、それだけで彼女に抱く印象が全て覆るわけではない。 エスデスはこの殺し合いにおいて厄介な女だという認識は。 だが、とりあえずいまやるべきことはこれだ。 「魏志軍...まどかや承太郎たちからきみの話は聞いている」 「あなたもコンサートホールにいたというのですか...それで、あなたは私をどうするつもりですか」 「一度襲ってきた以上、襲われる覚悟もあるだろう。つまり」 魏志軍が構えをとるのと同時にヒースクリフは駆け、魏志軍との距離をあっという間に詰める。 (速い!) 身にまとった鎧や盾からは考えられない速度で動くヒースクリフを見て、魏の心中に僅かに焦燥が生じる。 (...が、しかし。反応できない速さではない) 突き出される盾を躱し、右腕を振ろうとする。 それを認識したヒースクリフは、なんと魏の右掌に蹴撃を当てることにより魏の動きを制御。 それだけで血をばら撒かれるのを防いだ。 魏は舌打ちをしつつも、飛び退きヒースクリフから距離をとる。 (面倒な敵だ) ただでさえ高い身体能力に加え、鎧や盾に身を包まれた男だ。 血を浴びせるのは至難の業だろう。 ブラックマリンを使おうにも、エスデスがいる以上ほとんど効果はなさない。 ならば。 魏は、ヒースクリフやエスデスには目も暮れずにこの場からの逃走を試みる。 逃がしてたまるかとでもいうように、彼を追うヒースクリフ。 エスデスと新手の眼帯の男は追ってくる様子はない。 好都合だ、と魏は思う。 今まで逃走用に使用してきたスタングレネードはあとひとつしか残っておらず、タネも割れている以上、使うことは得策ではない。 それに、魏の目的はあくまでも首輪の補充。 エスデスとヒースクリフ。この二人に同時に襲い掛かられては流石に生きて帰ることはできないだろう。 だが、こうして彼一人を誘い込めば、いくらでも対処のしようはある。 思い通りにことが運んでくれたことに、魏は思わず笑みを浮かべる。 (これでいい) 逃げる魏を追いながら、茅場晶彦は思う。 いまの彼のスタンスは、『まどかの敵討ちに燃える男』となっている。 無論、彼女の死体を見てなにも思うことはなかったかといえば嘘になるが、それで敵討ちに燃えるなどという感情がある筈もない。 悪趣味なものだと内心エスデスに引いていた程度である。 エスデスにどこまで勘付かれているかはわからないが、結果として、魏とは一対一に持ち込めたし、エスデスもブラッドレイもこちらを追ってくる気配はない。 二つの不純物を取り払うことで、彼の目的の第一歩へと近づけた。 そのことを実感すると、茅場晶彦もまた思わず笑みを浮かべていた。 (意外と簡単に済んだが、さて、ここからがひとつの正念場だな) ☆ 「追わなくてよかったのかね」 去っていくヒースクリフと魏志軍を手を出さずに見届けていたエスデスに、ブラッドレイは問う。 「ああ。奴は私の知り合いだからな。その意は汲み取ってやるさ」 「知り合い、か」 「あいつは常に腹に一物を抱えているような男だからな。仮に裏切ったとしてもたいして驚かんさ」 それに、と付け加えるように氷の剣の切っ先をブラッドレイに向けて言い放つ。 「魏志軍の奴とももう少し戦いたかったが―――いまの私の興味はお前にある」 「ほう。私のことを知っているのかね?」 「卯月から聞いている。セリューやウェイブたちを圧倒した男だとな」 「卯月...島村卯月、彼女か。それで、きみはどうする?セリューくんたちの無念を晴らすために戦うかね?」 「いいや。奴は確かに貴様に敗北した。だが、殺したのは別の男だ」 もしも、セリュー達がキング・ブラッドレイに殺されたのなら、口上にもそのことを付け加えただろう。 だが、セリューを殺したのはおそらくゾルフ・J・キンブリーであり、彼もまた放送で呼ばれている。 マスタングもここで永遠の眠りにつき、ウェイブも既に離反している。 ならば、もはや口上にすら付け加える必要はない。 「私の愉しみの糧となってもらうぞ、キング・ブラッドレイ」 「取り繕いもしないか。それもまた良し」 エスデスに応じて、ブラッドレイもまた剣を抜き、構えをとる。 エスデスには先に去った二人を追わないかを尋ねたが、ブラッドレイ自身にも当てはまる。 先程、エスデスは来訪者をヒースクリフと呼んでいた。 それは即ち、当面の目的として接触しようとしていた男の名である。 棚からぼた餅とはよく言ったものだが、やはり御坂を置いて来てまで進路を変更した価値はあった。 だが、いまは彼に、戦場から去る者たちに構っている場合ではない。 眼前には、絶対なる強者がいる。 ブラッドレイの欲求を満たすに足る絶対的強者が。 ならば、力を温存する意味もないだろう。 ブラッドレイは、眼帯を外し『最強の眼』を露わにする。 二人の視野外で、水流による破壊音が響き渡るが、両者は意にも介さない。 ただ、眼前の強者と戦いたい。その想いだけが両者を占めている。 そして、幾度かの水流の音が鳴り響くのと同時。 両者は、共に駆け出した。 →
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387 :名無しさんなんだじぇ:2011/10/01(土) 14 51 26 ID w.XqHHmY 戦場ヶ原「許しがたい事態だわ」 上条「いきなり何だ?というか昨日しばらくは書き込まないって言ってなかったか?」 C.C.「それはネタが無くなったから、という理由からだろう?逆に言えば、ネタが出来ればいつでも書き込むということだ」 上条「なるほど…ひょっとしてそのネタって、昨日買ったっていう『鬼物語』のk」 戦場ヶ原「そんなわけあるか!そんなわけあるか!大事なことなので2回言いました!!」 上条「いや普通に考えればそれが一番可能性が高いだろう!?」 戦場ヶ原「ツッコむポイントそこなの?私の渾身のモノマネは見事にスルーしてしまうのね…」 上条「えっ?モノマネなんかしてたの?」 戦場ヶ原「分からないなら掘り返さないで……とにかく、『鬼物語』については、多くを語るつもりはないわ」 上条「何で?」 戦場ヶ原「聞くまでもないでしょう?阿良々木君のロリコン疑惑が完全に疑惑で無くなったり、内容が完全に映画『傷物語』のPRだったからよ」 上条「おい!デタラメを言うなデタラメを!!」 C.C.「あながちデタラメでもない気もするが…」 戦場ヶ原「まあ、これを書いている人の感想を一言で言えば、『傾物語』と『鬼物語』のサブタイ、入れ替えた方がよくね?ってことらしいわ」 C.C.「どういうことかは自分で購入して確かめるといい。税込で1365円だ」 戦場ヶ原「阿良々木君…というか西尾先生いわく、ここまでアニメ化されることはないそうだから、素直に原作を買うことをお勧めするわ」 上条「なんだかんだ言って宣伝までしてんじゃねーか…」 C&戦「「そこは宣伝乙って言えよ」」 388 :名無しさんなんだじぇ:2011/10/01(土) 14 51 57 ID w.XqHHmY 上条「じゃあ今日はどんな話をするんだよ?何が許せないんだ?」 戦場ヶ原「これを書いている人間が犯した大きなミスよ」 上条「はっ?」 C.C.「簡単に言うと、昨日までの書き込みの中にあった誤字脱字だな」 上条「いやそこまで怒ることなのか、それ?」 戦場ヶ原「何言ってるの!まるで私達が噛んでしまったみたいに思われるのよ!万死に値するわ!!」 上条「そこまで言う!?」 C.C.「まあ毒舌キャラにドジッ娘属性がついて萌える者がいるかどうかは分からんが…少なくともあの噛み方で萌える者はいないだろう」 上条「人の名前と能力名を噛んだ奴が言うことか?」 C&戦「「あれはわざとだから」」 上条「ですよねー」 C.C.「まあそういう訳で今回は誤字脱字含めて、昨日までの書き込みに修正を加えていく」 >>368 C&戦「「私達に、その常識は通用しねえ!!」」 →C&戦「「私達の毒舌に、その常識は通用しねえ!!」」 >>370 C&戦「そのままデイパックに突っ込んだ!!」 →C&戦「「そのまま無理やりデイパックに突っ込んだ!!」」 >>371 C&戦「うん」 →C&戦「「うん」」 戦場ヶ原「阿良々木君が来るまでの繋ぎ」 →戦場ヶ原「阿良々木君が来るまでの仮奴隷」 >>373 C.C.「まあ、昨日予定されていた本編投下も延期になってしまったし、読み手の人達も退屈していることだろう」 →C.C.「まあ、昨日予定されていた本編投下も延期になってしまったし、読み手の者達も退屈していることだろう」 上条「いや独自の情報網ってそれ完全に『バ○マン。』じゃねーか!!」 →上条「いや漫画とSSは全然違うだろう!それと独自の情報網ってそれ完全に『バ○マン。』じゃねーか!!」 >>374 C.C.「アニメといえば、『カイジ』2期も地区によってはもう最終回を迎えたようだな」 →C.C.「アニメといえば、『カイジ』2期も地域によってはもう最終回を迎えたようだな」 >>375 C&戦「そのウニ頭」 →C&戦「「そのウニ頭」」 >>376 上条「うるせェ!その場のノリでやっちまったンだ!!つーかまた原作ネタを出しやがったな!!!」 →上条「うるせェ!その場のノリでやっちまったンだ!!つゥかまた原作ネタを出しやがったな!!!」 >>377 戦場ヶ原「『一方通行は小文字を片仮名にする』って勘違いが特に多いわね。片仮名にするのは小母音(ァ・ィ・ゥ・ェ・ォ)だけでなのに、『っ』や『ゃ・ゅ・ょ』まで片仮名にしてる人も多かったわ」 →戦場ヶ原「『一方通行は小文字を片仮名にする』って勘違いが特に多いわね。片仮名にするのは小母音(ァ・ィ・ゥ・ェ・ォ)だけなのに、『っ』や『ゃ・ゅ・ょ』まで片仮名にしてる人も多かったわ」 >>383 上条「えっ?いや違うだろう。これお前自身が吐いた毒だろう」 →上条「えっ?いや違うだろう?これいつものお前のネタ毒だろう?」 C.C.「だが見様によっては、一方通行の参戦に投票した全ての住人に対する毒にも見えるし…」 →C.C.「だが見様によっては、このスレの書き手が一方通行の参戦に投票した全ての住人に向けた毒にも見えるし…」 戦場ヶ原「突き詰めれば、一方通行というキャラを生み出した鎌地先生への毒にも見えるわ」 →戦場ヶ原「突き詰めれば、一方通行というキャラを生み出した鎌池先生への毒にも見えるわ」 >>383 戦場ヶ原「まあ本当にネタが尽きたみたいだから、しばらくは書き込みはしないみただし…」 →戦場ヶ原「まあ本当にネタが尽きたみたいだから、しばらくは書き込みはしないみたいだし…」 389 :名無しさんなんだじぇ:2011/10/01(土) 14 52 20 ID w.XqHHmY 戦場ヶ原「以上よ」 上条「多いな…」 C.C.「あきれ返る程だな…」 戦場ヶ原「自分は散々一方通行の口調についてとやかく言ってた癖にね」 上条「実際にここで解説してたのお前らだけどな…」 C.C.「話は変わるが、本スレの方でとんでもない毒が吐かれたな」 戦場ヶ原「すぐにそげぶされたけどね」 C.C.「やはり毒吐きスレがない弊害がここにきて露見し始めたということか…」 戦場ヶ原「ええ、あのレベルの毒はさすがに『毒吐き代行』でも手に負えないわね…」 上条「あれは毒吐きスレでもOKか分からんけどな…」 C.C.「ところで何で『そげぶ』って言うんだ?『僕は…そのレスを…ぶっ壊す!!』なのだから『それぶ』の方がいいと思うのだが…」 戦場ヶ原「そういえばそうね…」 上条「シリアスな話から急にどうでもいい話を始めるな!!」
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〆(参)◆tu4bghlMIw 「ふぅん、ここで切るわけ」 「……続きはwikiで、なの」 「まぁこの先はちょっと表現し難いものね」 「それもあるけど……実はこの番組は一読さんが『本編を読みたくなってしまう』ような総集編を目指しているの」 「……にしては、ここまでボカしたのは初めてよね」 「様々な事情から、大幅に手を加え易いパートとそうでないパートがあるの」 「ああ、そっか。なるほどね」 アンソロ本を巡る騒動も過ぎ去り、杏とことみは和やかに言葉を交わす。 番組もついにCパートへと突入し、本筋に入らざるを得ない状況である。 「……ごほんっ! さて、こんな事を言っている間に……いつの間にかあたし達、ワープしてしまったみたいなんだけど」 「ワープというか……スタジオを移動しただ――ゴホッゴホッ!」 極めて不自然な言葉と共に、杏はキョロキョロと周囲に視線を散らした。 もちろん、テレビの前のお友達も突如二人の居る場所が変わってしまった事にお気付きのはずだ。 そしてそれ以上に画面における最大の変化が一つ。 つまり、二人の格好が赤ブルマ&光坂高校指定体操服という極めて健全な衣装ではなくなっている事である。 彼女達が見に纏っているのは学生のフォーマルウェアとも言うべき、学校の制服だった。 それもクリーム色の生地が特徴的な冬服ではなく、群青色のラインが特徴的な夏用のセーラー服だ。 「この服、まさにアニロワならではよねっ!」 「ゲームでは……わたしたちに夏服はないの……。京○ニに……感謝するの」 アニメ、という部分を妙に強調する二人。 大増量された赤ブルマもだが、ことみと杏の二人が光坂高校の夏服を着ている時点でそれはアニメ出典確定なのである。 が、視聴者の皆様はやはり既に『いくつかの不可解な点』にお気付きだろう。 光坂高校の夏服は白と深い青色をベースにしたオーソドックスなセーラー服だ。 スカートの丈がデザイン的に若干長めである事を除けば、別段不思議な点などないのだ。 では、何故――彼女達の服は不可思議な『メロンジュース色』に照らされているのだろうか? 「ふふふ、この色……もう鋭い人は気付いちゃってるでしょうね」 「この色は……普通……気付くの」 メロン、メロン、メロン……。 アニロワ2ndにおける「メロン」といえば勿論、参加者の一人V様ことビクトリームの大好物だ。 彼が登場話にてカミナと見せた抜群のコンビネーションはまさにアニロワ2ndの幕開けだった。 カミナに関して言えば、もしかしたらコレが一番目立っていた時期なのではないかともっぱらの噂である。 しかし、アニロワ2ndのwikiを「メロンジュース」で検索して貰えればとある状況において、この描写が用いられた事が分かるはずだ。 「それじゃあ、まだ分からない人のためにクイズを出しましょうか」 夏服のスカートが颯爽と舞う。 体操服から着替えられた事がよほど嬉しかったのだろう。 心なしか杏の表情も先ほどよりもウキウキとしているように見える。 「ある時はメロンジュース、またある時はストロベリージュース……これなーんだ?」 チッ、チッ、チッ、チッ、チッ、チッ、とカウントを取る音がサウンドエフェクトとして流れる。 そしてたっぷり十秒後。得意げな顔付きの杏がゆっくりと唇を開いた。 「答えは――――」 「……スイッチ・オン、なの」 豪快な動作と共に、メロン色だった空間へ眩い光が降り注いだ。 一瞬ホワイトアウトするテレビカメラ。 太陽の如き輝きに思わず眼を閉じた視聴者の視界に映った光景とは―― 「クイズの答えはズバリ――シズマァァアアッッッドライィィィイブ!」 「もしくは…………梅サワー?」 「お色直しも済んだし、アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 総集片第二部 in 大怪球フォーグラー! 始まるわよっ!」 アニロワ2ndのリーサルウェポン――大怪球フォーグラー。 この放送用に改造された大怪球フォーグラー(の多元宇宙的存在)特設スタジオに二人は移動していた。 本来ならばフォーグラーの内部は鮮やかな緑色の光で満たされているのだが、今回に限っては普通の蛍光灯が天井に嵌め込まれていた。 暗くて、時々赤色に光り、基本は蛍光緑色の空間でテレビの放送など出来る訳がないからだ。 スタジオの丁度中央にはもう御馴染みになった大画面。 そして、その目前に『フォーグラーらしさ』を追求するために台座が用意されていた。 そこには緑色の液体と赤いチェリー状の球体が浮かんでいる。 まさしく、アンチ・シズマ管のレプリカである。 現在、会場内の参加者達はコレを揃えるべく奮闘しているというのに、総集編ではいとも容易く収納してしまっていて申し訳なささえ感じるくらいだ。 加えて、ご丁寧に三本ある内の一本には油性マジックで『アルベルト』と名前が書いてあった。 「場所と服装が変わって心機一転ね」 「アニロワ2ndを語るのに……フォーグラー抜きはちょっとないの……それにしても、」 突如キョロキョロとことみが忙しなく視線を散らした。 「……どうしたのよ」 「こう、凄いロボットに乗っていると……色々言いたい台詞が思い浮かぶの」 「例えば?」 「『このロリコンどもめ!!』とか」 「いや、元ネタ的には間違ってはいないんだけどさ……」 「それじゃあ……『杏ちゃん! あれを使うの!』とか」 「『ええ、よくってよ』なんて答えてあげたいけど、フォーグラーじゃ無理。足がないから立てないもの」 「…………ガイナ立ちは本編に任せるの」 非常に口惜しげにことみが呟いた。 彼女は『キック』に意識を取られているため気付いていないのだが『ビーム』ならば、このフォーグラーでも発射出来るのだ。 だがそんな事を忠言してしまうと、辺り一面が重力レンズ砲で崩壊してしまう。触らぬが華、だ。 「さてと、」 そして台座の手前に置かれていたのが二組のフカフカのソファと飲み物とお茶請けが用意されたテーブルだった。 二人はゆっくりとそちらに向けて歩を進める。 「ゲスト呼ぶ?」 「まだちょっと……早いの……」 「じゃあ先にVTRかしら」 「なの。まずはフォーグラー誕生の秘話に迫るの」 バフッと杏がソファに勢いよくお尻から飛び込んだ。 ことみもそれに追従してゆっくりとした動作でその隣に腰掛ける。 そして、二人そろってのカメラ目線。笑顔。ニッコリと。VTRスタート。 【大怪球フォーグラー誕生列伝】 239話『W.O.D ~Wisemen On Discipline~/~World Of Darkness~/~Write Or Die~』 245話『月下の棋士/【ZOC】絶望の器/まきしまむはーと』 249話『てのひらのたいよう/明智健悟の耽美なるバトルロワイアル――閉幕』 ――――――――――――――――再生開始―――――――――――――――――――― ――〝コレ〟は……何だ? ▽ナレーション▽ 【暗澹なる澱から覗きし、ざわめくような光。 螺旋の輝きに似たキラメキの中で、女は自分の身体に得体の知れない感覚が生まれるのを感じた】 「……〝コレ〟……は、動くのか?」 世界制覇を目指すBF団が暗躍し、エマニエル・F・Fが10年の歳月と、無数の人員、大量の予算ををかけて製造したコレは。 BF団の最終悲願を達成するための露払いとして製造されたこの超巨大兵器の名前は――……、 ――大怪球 フランケン・フォン・フォーグラー。 形状は完全な球体で、直径は丁度300メートル。重量は500万トン超。超巨大――ロボット、である。 ▽ナレーション▽ 【賢き少年は苦悩する。そして驚愕する。 想像する。想起する――世界に〝静〟をもたらす巨大なる〝動〟の鼓動を】 ――全部全部終わっちゃえばいいよ。 その黒金の魔物の導線に火を灯したのは、争いとは最も程遠い少女の小さな手。 ▽ナレーション▽ 【そして彼女のおそれはつのる――】 瞬間、世界がもう一度赤く染まる。 再度のレッドアウト。部屋中の緑色が一斉にその彩を変化させて行く。 そう。 右を見ても、 左を見ても、 上を見ても、 そして、前を見ても、 全部全部全部全部……血のような、炎のような、黄昏のような――――紅。 ▽ナレーション▽ 【厄禍なる坩堝は自身への絶望と失望で満ちた。 夜が明ける。漆黒の世界を照らす輝きは更なる――黒き光】 光のない笑みと共に、頬を紅潮させた少女があどけない表情で嗤う。 世界なんていらない。 励ましも、感情も、思いやりも全部、全部だ。 二人の隙間を埋めるのは無機質な鉄と冷たい空気だけ。 終わりを求める少女の心は、いつの間にか空っぽになっていた。 残ったのは泥のように汚い醜悪な感情だけ。 自己の崩壊。他者への強烈な依存。そして羨望。 その結果生じる、状況認識力の低下。 自ずと湧き上がる破滅的思考。 非力な自己に対する憎悪。 徹底的な自身への蔑み。 思考力の著しい低下。 倫理観の歪み。 常識の欠落。 進化の終焉。 自己完結。 段階滅破。 終末願望。 無気力。 疲労。 発熱。 紅。 死。 何もかもが幻のようだった。 それは、世界が終焉を迎える寸前の出来事だ。 とある世界のとある男のように――少女は、世界に絶望を求める。 そして――――"黒き太陽"が動き出す。 ――――――――――――――――再生終了―――――――――――――――――――― 【参加者インタビュー⑥】 ●明智健悟(警視庁刑事部捜査一課警視・二十八歳) ――今日はよろしくお願いします。 わざわざこんな場所まで、申し訳ありません。 それにしても少々お疲れのご様子ですね。どうぞ、私の淹れた紅茶です。喉がお乾きでしょう? ――あ、すいません。それでは遠慮なく……。 いえ、こちらこそお口に合うと嬉しいなのですが。 ――え、わ……これ! す、すっごく美味しいです! そう言って頂けるとこちらも幸せな気分になります。お代わり、なされますか? ――あ、えと、どうしようかな……。んーと、じゃあもう一杯だけ……。 はい、どうぞ。まだまだ沢山ありますからね。藤林さん、お茶請けのお菓子もいかがですか? 士郎君とミー君が用意してくださったクッキーやスコーンがいくつも残っているんですよ。 ――あたし、もっと早く明智さんの所に来たかったです……。 おや、もしやお悩みでも? 私でよろしければ出来る限りの相談に乗らせて頂きますよ。 実はこう見えてもロスで心理セラピストの研修を受けた経験がありまして。 ――あぁ……、はいっ。えーと……ちょっとぐらいならいいよね……。あの、ですね! 実はその…………。 ふむ、なるほど……隣のクラスの卒業出来るかどうか心配だ、と。 この前は語尾に『便座カバー』をずっと付けていた……と。確かにコレは藤林さんが気に病む気持ちも分かりますね。 そして、もう一人の方……岡崎さん、ですか。彼がどうされましたか――? (この後、数十分以上に及ぶインタビュアーと明智の悩み相談が始まる。 恋愛、家庭事情、友人関係、進路……彼女はいくら普段気が強いからといえ多感な高校三年生に過ぎない。 当然、心配事は山のようにあるのだ) ――ありがとうございましたっ! あたし、何ていうか……その、スーッとしたっていうか……胸のつかえが取れた感じです! いえいえ。こちらこそ、お役に立ててなによりです。 ところで……テレビ番組のインタビューの方は大丈夫なのですか? ――………………すいません。えーと、その、もう少しお時間大丈夫ですか……。 ふふ、構いませんよ。 さてと、何から話したものでしょうね。 ――やはり各種名簿とレーダーの話をお伺いしたいです。 一言で表現するなら、禁断の道具ですね。 ただ、これを神の悪戯と呼ぶか、もしくは運命の邂逅と呼ぶかは人それぞれでしょう。 皮肉な巡り合いの末、それだけの力を持った支給品が揃ってしまった、という事です。 ですが、逆に大き過ぎる力は人に災禍を振り撒きます。 藤林さんも考えてみて見てください。 高嶺君は「レーダーを持っていたから」こそ、ゆたかさんを置いて私の元へ危機を報せにやって来ました。 私が同じ状況に直面していたとしても同様の行動を取ったでしょうね。 しかし――逆に、我々の手にレーダーがなかったとしたらどうでしょう? この場合、フォーグラーが暴走する、という結末は避けられたのではないでしょうか。 神の見えざる手に近しいそのような機能は、我々人の子には過ぎたる力だったのかもしれません。 出来るだけ多くの情報を持つ事が最良とは限らない。 人には人の、神には神の歩みが存在するのですから。 ――残念ながら、明智さんはゆたかさんの暴走を止める事が出来ませんでした。 あれは全面的に私の責任です。 ですが、ゆたかさんに無理な指示をした、という訳ではないと思っています。 我々がしてしまった致命的な過ちは彼女に「重荷を背負わせた」事です。 一方的に守られる事がどれだけ彼女に負担を掛けていたのか、これっぽっちも把握していなかった。 ですがね。お恥ずかしい話になりますが、今も私は信じているんですよ。 ゆたかさんには素晴らしい可能性が眠っている、とね。 彼女には本来、無限の未来が広がっているはずなんです。 あの時の私の失敗は、事態を急ぎ過ぎてしまった事です。 成員の心理状況の把握、不満と役割の調整。 どちらもリーダーとして決して疎かにしてはならないミスです。 それに……彼女に大して、もっと別の接し方があった。悔やんでも悔やみ切れません。 ――菫川ねねね、スカー。この両名へのメッセージをお願いしたいのですが……。 菫川先生。 大人としての役割を全て押し付けてしまった事、きっと怒ってらっしゃるでしょうね。 私としてはあなたが許してくれるのならば、喜んで謝罪に赴きたいのですが……死人としての身体ではそれも難しく。 あなたの書いた、あなただけの本当の物語。 クライマックスはこれからです。期待していますよ。見せて頂けるのでしょう? 最高のハッピーエンドと大団円を。 スカー氏。我々が共有した時間は極めて短い。 私はあなたについての情報こそ持っていますが「あなたという人」については限りなく無知です。 ですが、私達はあの瞬間、確かに一本の線で繋がった――仲間です。 導いてあげて下さい。行く先の見えない未来に立ち止まる子供達を。 示してあげて下さい。その〝破壊の右腕〟で切り裂く本当の未来を。 ――ありがとうございました。 いえ、こちらも素晴らしい経験が出来ました。有意義な時間でしたね。 ▽ 「杏ちゃん……職務放棄にも程があるの……」 「え、あ、あははははは……」 「でも明智さんは凄いの。ロスは偉大なの」 「まぁロスだしね」 「あ……それと……ロスも凄いけれど……眼鏡も凄いの」 「眼鏡?」 杏の頭上にクエスチョンマークが飛び出した。 眼鏡。確かに明智は眼鏡の似合うナイスガイではあるが……。 「今時、眼鏡があれだけ似合う人はいないの」 「確かに。今は、アンチ眼鏡が蔓延る時代だし」 「むしろ……智代ちゃんみたいな隠れメガネじゃないとダメなの……」 「純粋なメガネっ子……確かに言われて見るとパッとは思いつかないわね」 「いるの。眼鏡のせいで四人組の中でいつも一人省られたりするの……眼鏡はバッドステータス……回避不能の死亡フラグ……」 「あはははははははっ! ことみ、ちょっと言い過ぎっ!」 大きなお世話、としか言いようがない会話で盛り上がることみと杏。 全世界の眼鏡ヒロイン各位に喧嘩を売っている。 が、すぐに眼鏡トークに飽きた二人は行儀よくカメラに向き直ると、 「さて、ここまで楽しく過去の話を振り返って来た訳だけど……」 「そろそろ一度、現状の整理をする時間なの」 二人の台詞と共に、カメラの端、スタジオの奥からガラゴロと縦回転式のメッセージボードが運ばれて来た。 大きさは身長の低いことみが目一杯背伸びをして丁度一番上まで届く程度。 無言で、くるりとソレの掲示板の部分をことみはひっくり返す。 「じゃあ、まず本編と直接リンクする282話『愛に時間を』終了時点でのお浚いをしてみましょうか」 どこから取り出したのか、指揮棒のような物を杏がボードに当てた。 そこには現在の生き残りに関する相関図が記載されている。 「まずは便宜上……《グレンラガンチーム》とするの。 ここに属しているのは【ヴィラル】【シャマル】【クロスミラージュ】の三名。 夫妻の愛の巣に囚われのヒロイン的拳銃型デバイスという構図」 大きく丸で囲まれた三つの名前。 ヴィラルとシャマルの間の矢印付近には『LOVE天元突破!』『君を乗せて』『俺はシャマルと添い遂げる』といった小恥ずかしい文字が書き込まれている。 「まぁVTRをもう一度見てみるの」 282話『愛に時間を』 ――――――――――――――――再生開始―――――――――――――――――――― 「――オレのドリルがァアアアアア!!」 ドリルと化したラガンの内部より、ヴィラルの叫び声が響く。 それは外にも漏れ、ドリルの回転音にも負けず、皆の耳に届いた。 空中で停止していたラガンが、回転を強めながら降下する。 「――シャマルを貫きィイイイイイ!!」 まっすぐ、直下のグレンへと突き刺さる。 グレンの頭頂部を穿ち、貫通して、一心同体となる。 「――合体するッ!!」 異なるガンメンにドリルで接続し、その機体のコントロールシステムを掌握する。 ラガンにのみ搭載された特殊機能によって、今、グレンとラガンが一つになった。 ドリルはグレンの頭頂部を通して、シャマルが席を置くコクピットまで届く。 両機体の操縦席がドリルで繋がり、またそのドリルを管として、ヴィラルは螺旋力を流し込んだ。 グレンの全機械系等に、そしてシャマル自身に。 黒こげだったグレンの全姿は、注がれた螺旋力を洗浄剤として、一瞬の内に赤を取り戻した。 装甲の損傷すら掻き消し、まった新しい姿へと生まれ変わる。 力と力が合わさる様。 機械と機械が見せる芸術。 愛と愛の結晶。 広大なる多元宇宙の果て、男と女はロマンに乗せて、こう叫ぶ。 「「 愛 情 合 体 ッ ! 天元突破グレンラガン!! 」」 ……ヴィラルとシャマルの掛け声が重なり、会場全域に轟いた。 ラガンは頭部として、グレンの首に収まっている。 グレン背部に収納されていた飾兜が、ラガンに被さった。 顔面兵器などではない、真っ当な人型を成す合体メカは、巨人として聳え立つ。 ――――――――――――――――再生終了―――――――――――――――――――― 「…………うわぁ」 「…………卑猥」 「こ、ここまでやられると、むしろ清々しいわよね」 「気合があれば本当に何でも出来てしまうのが螺旋力なの」 この合体を見せ付けられた他の参加者同様、二人も微妙に頬を赤くした。 正直、子供には絶対見せたくない展開である。非常に教育的によろしくない。 「そして、天元突破しちゃったと……」 「『男の人と、女の人が、愛し合って、合体する』のがアニロワ2ndのクライマックスだったの」 「BL合戦といい、コレといい……とんでもないロワだわ」 杏がパタパタと手団扇で体温の上がった顔に風を送る。 公共の電波を使って、何をやっているのだろうという疑問が湧き上がって来るようだった。 「そして、このグレンラガンが主人公チームと相対している、と」 「……そうなの。ただ、グレンラガンチームにはクロスミラージュが囚われているのだけど……」 「なんか、歯切れが悪いわね」 「そりゃあカミナさんがあの有様じゃあ、言い淀みもするの……」 クロスミラージュ。 本来ならばティアナ・ランスターの使用するデバイスに過ぎない彼/彼女だが、アニロワ2ndでは事情が異なる。 先のマスターのインタビュー内容からも分かるように、もはや参加者の一人と言っても過言ではない活躍を見せている。 確かに、カミナの相手といえば口付けを交わした仲であるドモン・カッシュが有名かもしれない。 しかし彼らが一緒に行動した時間は短く、逆にクロスミラージュとカミナの絆は非常に深い。 「むぅ、何よ。じゃあ肝心のカミナはどうなってる訳?」 「ギルガメッシュさんにフルボッコにされたの」 「………………」 「もう完膚なきまでに」 「………………」 「手も足も出ずに」 画面が切り替わり『愛に時間を』におけるギルガメッシュとカミナのバトルシーンが映し出された。 叫びながら殴り掛かるカミナ。完全に舐め切った口調であしらうギルガメッシュ。 両者の間には天と地ほどに深い実力の差があった。 「まぁフォローするとして……いくら何でもカミナさんがこのまま何もせずに終わる……という事はないと思うの」 「何か、予想外の活躍を見せる、と?」 「そうなの。もし……このまま何もしなかったら『アニロワ2ndのドラえもん』という称号をプレゼント」 「…………もうそうなる可能性にチェックが掛かってる気が」 「そうなった時は……わたしと読者一同の腹いせとしてエピローグ中に眼でピーナッツを噛んで貰うとするの」 ▽ 【参加者インタビュー⑦】 ●衛宮士郎(第五次聖杯戦争勝者・魔術師/十八歳) ――いきなりですが、凄く失礼な事をお聞きしてもよろしいでしょうか。 な、何だ……随分唐突だな。 とりあえず聞いてみない事には何とも言えないけど。 ――はい、では。アニロワ2ndの士郎さんは『シスコン』&『ロリコン』という扱いで宜しいでしょうか。 なっ……!? ちょ、ちょっと待ってくれよ! 何でそんな扱いになるんだ!? ――だって『イリヤの味方』なんですよね? うっ……そ、それを言われると…………まいったな。 いや、まぁ。そりゃあイリヤとは仲良くやってるけど、それがそういう……その、何だ。 そ、そういう言葉で括れるかどうか、って訊かれれば難しいし。 あ、ちょ、な、何だよその眼は!? まるで犯罪者を見るような……。ニ、ニヤニヤしないでくれよ……。 ――それでは、本題に入りましょう。 バッカーノ、怪獣大決戦を引き起こした原因は士郎さんの不用意な行動にあるという説が一般的ですが。 それは、まぁ認めるよ。 俺が鍋を作ろうとしたのが東方不敗を映画館に呼び込むきっかけになった訳だし。 しかも人質にされて……申し訳なくて、明智さん達に合わせる顔がなかったよ。 ――ゲーム開始直後、実は南方の学校で間桐慎也さんが士郎さんの訪問を待っていたのですが。 ……………………そ、それは初耳だったな。 でもさ、ああ見えても、あいつ結構良い所あるんだ。 あんまり悪く言わないでやってくれよ。 …………は、お、女の子に襲い掛かった? 『お前、服を脱げよ。そしたら信用してやる』という最低な台詞を残した……だって!? いや、そんな。嘘だろ? ……嘘じゃ、ない? ………………えーと。 ――こちらとしてはドモンさん、東方不敗さんに対するメッセージを士郎さんには頂きたいです。 ドモン……ああ、俺を鍛えてくれた男の事か。 それほど長い付き合いじゃあなかったけど、アイツの実力は本物だと思うよ。 少なくとも、正面からならギルガメッシュにだって引けは取らないんじゃないかな。 でも俺の知る限りじゃあ、まだまだ全力を出す機会には恵まれてないな。 多分、あの力が生き残った人達……ねねね先生とか……ギルガメッシュを助ける場合もあると思う。 東方不敗は……そうだな、確か『上』の連中側に付いたんだっけ。 だとしたら、正直――最強の敵、じゃないかな。 会場に降りて来るのに生身って事もないだろうし、この爺さんをどうにかしない限り活路はない筈さ。 対抗出来る奴がいるとすれば…………まぁ、分かるだろ? ――本日はありがとうございました。お姉さんとは仲良くしてあげて下さいね。 …………なんか引っ掛かる言い方だな。 言われなくてもそうするよ。今日だってこの後、イリヤと一緒に買い物に行く約束を―― ▽ 「この後アイツ、イリヤちゃんと手を繋いでどっかに行っちゃたのよねぇ」 「まったく。姉に手を出すなんて……とんでもない奴。…………嘆かわしい限りなの」 「でも、この世の中には妹や姉にはとりあえず手を出さないと逆にヘタレ扱いされる世界もあるらしいけど」 「普通、姉妹とはそういう事しないの」 「ごもっともで」 これまた今日何度目か分からない両者の息の合ったため息。 全くもって気苦労の耐えない番組である。 「それでも、士郎に関しては立派な最期だったって意見も多いわよ」 「まぁ実際、死後に好き勝手出来るのは…………生前の良い行いのおかげなの。……某ワカメとは比べられないの」 「アレは女の敵よね」 「そりゃあラーメンのダシ骨と一緒に埋められても仕方ないの」 二人は顔を見合わせ、やれやれとジェスチャーで示した。 が、すぐに気を取り直し番組を再開する。 次にことみが指示棒で指し示したのは大きく『VS』と書かれた先にある集団だった。 「さて、前話は『愛に時間を』のラストでギガラヴドリルブレイクを夫妻チームがぶち咬ました所で『引き』なの」 「……ということは、」 「そう……おそらく最終回の冒頭は主人公チームがこの一撃にどう反応するかが焦点になるの」 ――主人公チーム。 メンバーは【スパイク・スピーゲル】【ガッシュ・ベル】【鴇羽舞衣】【ジン】【小早川ゆたか】【スカー】【ドモン・カッシュ】【菫川ねねね】の八名。 彼らがパロロワ用語でいうメインの『対主催チーム』だ。 そして、七つの名前の間にはいくつもの矢印や言葉が書き込まれている。 『ぁゃιぃ関係』『パヤパヤ』『俺は二人殺した』『私は六人殺したわ』などなど、愉快な有様だ。 「ふぅん。でもコレ……普通に考えたら……」 「ダメ……わたし達が展開予想するのは禁則事項なの」 「あ、とと……ゴメンゴメン」 「でも……全話読んでるアニロワ2nd住民のお友達にサービス。 この『愛に時間を』をしっかりと読み込んでおくと……すんなり最終回に入れる、とは言っておくの」 時間がそれなりに空いてしまったため、記憶が風化している可能性は否めない。 しっかりと復習をすることで、新しい出来事を楽しみ易くなるというものだ。 「後は当然、事実上のラスボスポジに座っている【ルルーシュ・ランペルージ】【ニコラス・D・ウルフウッド】【東方不敗】の三人」 「この三人が目立たない、なんて事は流石に有り得ないわね」 「そして、対主催チームから一人離れて勝手気ままな行動をしている【ギルガメッシュ】。この十五名が現在の生き残りなの」 「最終回は、彼の行動もおそらく注目所の一つでしょうね」 「結城奈緒さんが生きていれば、手伝ってくれたかもしれないけれど……今や主人公チームとの仲は決裂状態」 「一触即発、とはいかないけれど一概に『仲間』と言う事も出来ないわ」 画面に映し出されたのは黄金の王――ギルガメッシュ。 残された参加者の中でも最強に近い力を持ち、圧倒的な力を持つ宝具も所有するキーパーソンである。 「大怪球フォーグラーを叩き落す、マップ一列を焼き払う、数の子を甚振る、ワカメを嬲る、裸になる、猫の仮装をする――とやりたい放題」 「アニロワ2ndでは珍しい序盤からずっと活躍しているキャラよね」 「なの。……ここの参加者は何故か、空気期間がある人が多いの」 「ああ。でも、ずっと空気な人もいるんじゃ。例えばス――」 「杏ちゃん!」 強い口調でことみが杏を咎めた。 今日は明らかに普段よりも『……』が少ないことみではあるが、こんなに強い言い方をするのは初めてだった。 注意された杏も、ビクッと背筋を震わせた。 「ご、ゴメン」 「ス――ではなく……えーと…………そう、いくら陰が薄いからってフリードのことを悪く言っちゃダメ……なの。 動物を苛める事はこのわたしが許さないの……。悪い人は地獄になが――ではなく、多元宇宙迷宮に幽閉するの……」 いきなり話題を切り替えたことみが強い視線を携え言った。 もっとも杏も動物の飼い主なので、ペットを苛めたりはしない。…………たぶん。 だが、ソレよりも杏には気になる事があった。 「フリード」 「そう……フリード、なの」 「ねぇことみ。変な事聞いていい?」 「……?」 「フリードって何だっけ」 「――ッ!?」 そう、ことみの発した『フリード』という単語が何を指すのか、杏は理解出来なかったのだ。 どうも動物らしい事は先程の台詞から理解したのだが、ソレが何の動物なのか完全に失念してしまっている。 「…………フリードは竜なの……白い、竜……。キャロ・ル・ルシエちゃんのペットみたいなもの」 「……あ。そういえば、ゆたかの周りでたまに『キャウ!』とか言ってたような。極稀に」 「まぁ登場自体が結構後半で、しかも支給品ですらなかったし……ぶっちゃけ、今まで何もやってないし……忘れてた杏ちゃんを責められないの」 「これは……や、ヤバイくらい空気ね……最終回で活躍する……のかしら」 「……ちょっと……それは……わたしもコメントし辛いの」 スタジオに本日何度目か分からない重苦しいムードが流れた。 ――空気。 例えば、 『私、あなたにとってどういう存在?』 『お前は……俺にとって空気みたいな存在だよ』 という台詞が恋人同士で飛び交った場合、それは好意的なニュアンスを表している筈だ。 空気とはつまり、『なくてはならないもの』だとか『ある事に疑問を持たないくらい自然なもの』という意味を含むのだ。 間違っても、 『私、あなたにとってどういう存在?』 『お前は……俺にとって箱ティッシュみたいな存在だよ』 なんて返答してしまった場合、このカップルはおそらく長くは続かない。 たとえ、それがぶっちゃけ、似たような事柄を指しているとしても、だ。 こうして考えてみると、空気とは意外と良い比喩なのである。 しかし、パロロワにおける『空気』とは『いてもいなくても関係ない』という場合においてだけ使用される。 俗に言う空気キャラという奴だ。 主催との因縁だけで生き延びた、とまで言われるアニロワ1stの空気生還者ドラえもん。 後半は一気にエクソダス請負人としての力を発揮したものの、最初は極めて地味だったゲイン。 あまりに圧倒的な力を持つチートキャラであった事。 そして、把握が恐ろしく難しいという条件が重なり、200話時点で8話しか登場していなかったスパロワのフォルカ。 第二放送直前まで誰にも会う事が出来ず、それ以降でも終始カップルのおまけ扱いで最終的には主催者側から空気宣告をされたギャルゲロワの白鐘沙羅。 だが、二人は知っていた。 本当の空気キャラとはマジでネタにならないほど地味な連中を指すという事を。 彼らは総じて『空気キャラである事すら忘れるほど空気』なのである。 あまりに不憫なため、ここで名前を挙げる事すら憚られてしまうほどに。 そして、フリードの存在感の無さは明らかに後者だった。 「え、えーと……」 「ゴホ、ゴホゴホゴホ! じ、実は番組の冒頭でも言ってあったけれど……ゲストをお呼びしてあるの!」 「あ……そ、そうだったわね!」 しどろもどろになりながら、話題を変える二人。 これ以上、あの空気竜に触れてはならない。 番組進行係としての指名が高らかと警鐘を鳴らしていた。 「ゲストは二人……でも、その前にインタビューなの」 「こっちも何と二人……妙な因縁で結ばれたアニロワ2ndの名物コンビよ」 「つまり……そう〝名物に美味いもの無し〟という事の裏付け」 「げ……っ」 もう言っていい事といけない事の区別も曖昧だった。 杏はことみに突っ込みたくて堪らなかったのだが、それよりもフリードの話題をコレ以上したくなかった。 故に、あえてのスルー。 のほほんとした顔付きの相方の言葉に対して、聞こえない振りをした。 「……あーもう。はい、じゃあVTRどうぞ。ったく、どこも問題のある奴ばかりだわ……」 ▽ 【参加者インタビュー⑧&⑨】 ●ラッド・ルッソ(シカゴ発ニューヨーク行大陸横断鉄道フライング・プッシーフット号 乗客『白服集団』リーダー・二十五歳) & ●柊かがみ(陵桜学園高等部三年C組・十八歳) ラッド「てかよ。おい、そこの……なんだ、かがみちゃんそっくりの姉ちゃん」 ――は、はい? あのあたし、まだ何も聞いてないんですけど……それにその発言は……。 ラッド「いいからいいから、ちょっとだけ俺に先に質問させてくれ。何で――俺とかがみちゃんだけ、一緒にインタビューな訳?」 かがみ「そうよね。私もソレは気になってたの」 ――いや、ずっと一緒だった訳ですし、そちらの方がいいかと思いまして。 ラッド「そりゃまぁそうかもしれねぇけどよぉ。そこをあえて一人一人に突っ込んでいくのがプロって奴なんじゃないかね」 かがみ「実際、二人揃って……なんて、安易な考えよね。『ラッドみん』なんてぶっちゃけ、あんまりウケ良くなかったのに」 ラッド「そうソレ! 俺がやった事に文句言われるのは構わねぇんだわ。 でもよ。喰われてからかがみちゃんに出てたのはよぉ、俺じゃねぇんだぜ? 気分は良くねぇわな。そこンとこ、忘れねぇで貰いてぇな」 ――(こいつら……)あ、あの、ですね。それでも、番組の編成上の都合というものがありまして……。 ラッド「都合だぁ? おいおいおい、何だよその言い分は――」 かがみ「ちょっとちょっとラッド。それは言い過ぎよ。怖がってるじゃない。せっかく来てくれたんだからあんまり悪くいっちゃ失礼だわ。 あ、インタビュアーさん。答えますんで、質問してください」 ラッド「……ったく、変わり身のお早い事で。分かった分かった、聞いてやるよ姉ちゃん。ヒャハハハハハハ!」 ――(……か、帰りたい)……はい、ではお二人に質問させて頂きます。生前で一番印象に残っている相手はどなたでしょうか。 かがみ「酷い目に遭わされた……という意味ではウルフウッド。それとやっぱりアルベルトね」 ラッド「あーそうだな。俺は相羽兄弟とはそこそこ関わりがあったんじゃねぇか? 殺しきれなかった、って意味ならやっぱギルちゃんと東方不敗のジジィは名残惜しいな」 ――なるほど。お二人が挙げた人物ですとウルフウッド、ギルガメッシュ、東方不敗の三名は未だ生存中ですが。 ラッド「さっさと死ね、いや、今すぐにでも俺に殺させる!って面子だねぇ」 かがみ「私とラッドの経験を合わせると今の生存者とは大抵結構大きめな接点があるのよね」 ラッド「かもな。『狂人』が表に出てた時に主だった連中とは会ってるしな」 かがみ「そうそう。顔を合わせた事もないのは……夫妻とカミナぐらいかしら。ある意味納得出来ちゃう連中ね」 ――『ラッドみん』もとい『狂人』についてお聞きしたいのですが。 かがみ「いざ面と向かって聞きたい、って言われちゃうと困るかも」 ラッド「アレは俺らっぽい、ってだけじゃねぇか? 身体はかがみ、心は俺……って訳でもねぇしよ」 かがみ「でも沢山の人に迷惑を掛けたのは事実だし……なんか、情けないな」 ラッド「まぁ最期は割合綺麗に終われて良かったんじゃねぇか。わざわざ俺が出張ってやったんだから当然だけどな」 かがみ「……かなぁ」 ――思ったんですけど、お二人とも妙に仲良しですよね。 かがみ「えぇー……」 ラッド「おいおいおいおい! んだよかがみちゃん、その反応はよ。スッッッッッゲェ、嫌そうじゃねぇかっ!」 かがみ「いや、っていうかさ。……そういうの本当に勘弁して欲しいんだけど」 ラッド「はぁっ!? 待てよ、何だそりゃあ。俺と相性バッチリって言われたのが気にいらねぇってか!? ツレネェなぁ。こんないたいけな〝お兄さん〟を捕まえてその台詞はあんまりってもんだぜ!?」 かがみ「だってアンタ。お兄さんっていうかおじ――」 ――ッ……は、はいっ! こ、ここまでで結構です! お二人ともお疲れ様でしたっ! かがみ「へ? あたしの台詞まだ途ちゅ――」 ――(この子、不死者になったからかしら。危険発言が多すぎるわ……)いいんです! ありがとうございました! かがみ「んー……イマイチ納得いかないけど。ま、いいか。うん、こっちこそ。あ、可愛く編集してね」 ラッド「おぅ、もう終わりか? 話し足りねぇがまぁ今日はこの辺で止めといてやるか」 ▽ 時系列順に読む Back 〆(弐) Next 〆(肆)
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マスター サーヴァント その他の登場人物
https://w.atwiki.jp/animefate/pages/17.html
令呪は一人のマスターにつき三画現れる。 聖杯に選ばれたマスターたる証であり、一画一画がサーヴァントに対する絶対命令権となる。 また令呪を消費することでサーヴァントを強化し、通常の物理法則をも無視した行動をとらせることも出来る。 すべてを失えば聖杯戦争からの脱落を意味するため、聖杯戦争中、2度までしか使うことは許されない。
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私の名は木山春生。大脳生理学者で専攻はAIM拡散力場。学園都市の能力者が無意識下で周囲に放出している力の事だが… これを読んでいる君たちにはいらぬ説明だったな。さて、そんな一介の脳科学者に過ぎないこの私が今回のとある大きな出来事についての語り部の一翼を担うことに ついて読者諸君はどう思うのだろうか。まあ、一人ひとり抱く思いは違うだろうが、どうか最後まで見届けて欲しいものだ。 今私が何をしているかというと、研究室を出て、地方の小さな都市、冬木市という街に諸事情にて出張に出ているところだ。 私の愛車である青いボディのランボルギーニ・ガヤルドで高速道路を1時間弱走り、県道を30分くらいだろうか、走らせたところで目的の街、冬木市にたどり着く。 私の出張中の住まいは、冬木市の中心部に位置する6階建てのマンションということになっている。地図をもとに車を走らせ、そのマンションの位置を 確認したのち、図書館へと向かい資料集めへと取り掛かる。―冬木市中央図書館。県内でも有数の蔵書量を誇り、わざわざ市外からここに来る者も多い。 …と入り口すぐ近くの案内に記されてあった。まあ、仕事を進めるにあたって蔵書量が多いに越したことはない。 私は、図書館内に足を踏み入れると目的の資料を集めに、脳科学を扱った本を揃えているコーナーへと向かった。私の研究の参考になりそうな本を3,4冊見繕い 図書館中央のテーブルへと向かう。席についていた人数はまばらで、別にどこでもよかったのだが、ある一か所が私の目に留まる。 車椅子の少女ともう一人の少女が楽しそうに語らいながら勉強をしていたのだ。その光景にかつて私が学校で教鞭を振るっていた時のことを思い出し、 どこでもいいのならあそこにすればいいという結論に達し、その車椅子の少女の隣まで歩を進める。 「隣、座ってもいいかね?」 「あ、はい、ええですよ」 と、やんわり優しい関西弁で了承を得、私は隣に腰を下ろすと鞄からノートパソコンを取り出し、先ほど持ってきた資料を基に仕事を進める。 順調な滑り出しだな、一日目の進行度としては上出来だろう。しかし… 「なあすずかちゃん、この問題どうやって解いたらええんやろうか?」 「どれどれ…ん~、私にもちょっとわかんないなあ…ごめんね、はやてちゃん」 どうやら隣の少女たちはわからない問題に苦戦しているようだ。解らないことを解るようにしてきたからこそ今日の人類の発展があるのだが… ここはそんな大層な規模の話を持ち出す場所ではないな。元教師として、ここは助け舟を出すことにしよう。 「君たち、困っているようだね。その問題は、こうすればいいんじゃないかね?」 「あ、そっか、お姉さん、ありがとな」 「なに、気にすることはないさ。これでも元教師だから。ときに君たちはいつもここで勉強してるのかね?」 「はい、よくはやてちゃんと二人でここで楽しくおしゃべりしながらやってますけど」 「そうか。私も出張中でしばらくはここで仕事を進めることになるからまた顔を合わすこともあるだろうな。その時はよろしく頼むよ」 「あ、はい。こちらこそ」 私は彼女たちに背を向けて手を振り、先ほど持ってきた本を返しに行く。あとは自室に戻り報告書をまとめるだけなのだが… ここで妙なことに気付く。持って行ったときの本の隙間と、今返すにあたっての本の隙間の数が一致していない。一冊入れられないのだ。 脳科学などという難しい命題の本を先ほど席についていた客層が持っていったり、戻したりするとはとは考えにくいからここで考えられるのは一つしかない。 誰かが別のコーナーの蔵書を間違ってここにしまった、ということだろう。そういうことならば背表紙のタイトルでそれとわかる本があるはずだ。 そしてそれはすぐに見つかった。タイトルは『魔術師と聖杯戦争のあらまし』。 その本を棚から抜き取り、持っていた脳科学の本を出来た隙間にしまう。さて、この本は果たしてどのコーナーに持っていけばいいのか… この本が本来あるべき場所を探すまでの間、私はその本を読みながら歩き続けた。かいつまんで言うと、魔術師たちが過去の英雄たちを英霊として召喚し、 それらを下僕として使役、戦わせることで最後に残った一組があらゆる願いを叶えられる聖杯を手にすることができ、この聖杯を巡る戦いを『聖杯戦争』といい、 数十年に一度、この冬木の地で行われるのだそうだ。 この科学の世の中に魔術師だの英霊だの聖杯だの絵空事にもほどがあると一笑に付してしまう。このような荒唐無稽な内容の本まで置いてあるとはさすがというべきだ。 しかし、この類の本が置いてあるコーナーをしばらく彷徨ってみても一向にしまえそうな場所は見当たらない。 仕方なく、蔵書検索用パソコンにタイトルを入力し、検索をかけてみるのだが…検索結果に表示された数値は『0』だった。 タイピングミスかと思い、もう一度背表紙を確認したところで、この本が図書館の蔵書ではありえないことに気付いた。 本来図書館の蔵書には背表紙に識別番号が書かれたラベル、裏表紙には貸出記録を管理するためのバーコードなどが張り付けられているものだが、 この本はそれらしきものが一切見当たらなかった。つまりこの本は外部の人間が、何らかの目的を持ってこの図書館に持ち込んだということになる。 この本に対して得体の知れぬ何かを感じつつも、私はこの本を自室へと持って帰ることにした。 すでに生活様式が一通りそろえられたワンルームマンションの一室で、私はこの本を更に熟読する。 『通常、英霊を召喚する際にはその英霊に纏わる触媒が必要となる。それがない場合は、召喚者(マスター)の性質に最も近しい英霊が下僕(サーヴァント)として召喚される。 召喚が完了すると、召喚者の手の甲には令呪というサーヴァントに対する絶対命令権を宿した紋章が浮かび上がり、これが強大な力を秘めたサーヴァントを 人間が御する唯一のカギである』 なるほど…当初は荒唐無稽だと一笑に臥してしまったがここまで詳しく書かれていると現実味を帯びてくるというものだ。 そして私は次のページをめくったのだが、その刹那、ページに挟まっていたあるものが床に敷き詰められていたカーペットにはらりと落ちる。 これは…束ねられた獣の毛だな。色は…銀色に輝いている。それを手にした瞬間、私の頭の中にある考えがよぎる。 万に一つ、この本に書かれている内容がすべて真実だったとしたならばこの獣の毛を触媒とすることでサーヴァントを召喚できるのではないかと考えたのだ。 それが実現すれば、この本をあの図書館へと持ち込んだものの正体も大体の見当は付く。この本を最初に手にしたものにこの毛を触媒とすることで サーヴァントを召喚させ、聖杯戦争へと参加させる腹積もりなのだろう。そして聖杯戦争を開戦させ、他のマスターとサーヴァントをすべて打ち倒し 聖杯を手にし、あらゆる願望を実現させる…面白い。どこの誰だか解らんが、君の仕掛けたその勝負、私が買おうじゃないか。 その本に記されていた通りの魔方陣を紙に描き、その中央に白獣の毛を置き、召喚のための呪文を詠唱する。 「――――告げる。 汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。 されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者――。汝三大の言霊を纏う七天、 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」 瞬間、室内だというのに疾風が吹き荒れ、周囲の家具を大きく揺らす。その疾風は魔方陣の中央で一つの渦となり、その渦も一瞬で立ち消え、現れたのは… 髑髏をモチーフにしたエンブレムで前面部が装飾された大きな帽子と、口元まで覆い隠す様な大きな襟のついた白いコートを身に纏い、 腰のあたりには異常に銃身の長い拳銃を右と左に一つずつ下げた大男だった。 眼前で起きたあまりの出来事に私は言葉も出ないが、それと同じように眼前の大男も一言も発さない。すでに疾風も静まり、部屋の中を沈黙が支配する。 向こうはどうやら何もしゃべるつもりはないようだ。ならば仕方ない、こちらから行くしかあるまい。 「君が、私のサーヴァントなのかね?」 その男は、ただ無言でうなずくのみ。驚いた、どうやら本当にサーヴァントを召喚してしまったようだ。それならば次に確認すべきは… 「君のサーヴァントのクラスは、バーサーカーかね?」 やはり無言で一つ頷くだけ。やはりな。獣の毛を触媒とすることから召喚されるのはバーサーカーだと予想はしていたが… おもむろに自分の手の甲に目を落とす。そこにはくっきりと浮かび上がった幾何学的な模様を取った痣、すなわち令呪があった。 これから先の聖杯戦争に打ち勝てばあらゆる願いを叶えられる。そう、『子供たち』を救うためにも、私はこの戦いに勝たなくてはならない―!
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【アニメ・漫画・ゲーム関連コスプレ系バラエティヒーロー】カテゴリです。 2000年代前半のアニメ関連グッズ系TVCM等に登場したアニメキャラの実写版CMヒーローキャラを紹介します。 もちろん実写オンリーで、CGキャラやアニメキャラはふくまれておりません。 00年代後半はアニメ実写版系CMヒーロー(2000年代後半)を参照してください。 ★ポプラ社 / プレコミックブンブン(2004) ●かいけつゾロリ(不明) アニメ放送当時、同誌にも漫画が連載されていたポプラ社の絵本のキャラのぬいぐるみ(他に『ゾロリ』の玩具関連のCMにも登場)。 歌いながら行進している子供達の横でブランコに乗っている。 ★シック / Mr.インクレディブルキャンペーン(2004) ●Mr.インクレディブル(パックン〈パックンマックン〉) Mr.インクレディブルのコスプレ姿で、華麗にヒゲを剃る。 ★バンダイビジュアル / シャア専用DVD(2004) ●シャアに憧れる男(林家ぺー) 『機動戦士ガンダム』のシャア・アズナブルに憧れ、彼本来のトレードマークであるピンクの衣装ではなく、シャア専用モビルスーツのトレードマークである赤の衣装で決める。 情報提供 MEETSさん, ブベンボーさん